市場のリサーチ
経営観点または技術起点で市場を選定したら、次に選定した市場のリサーチを行います。
市場のリサーチには3つの方法があり、ここでインプットした情報をもとに事業アイデアを創出します。事業アイデアが出ない場合は、市場のリサーチをやり直します。
市場の「予測」:行動変化の生まれる政策を探す
市場を予測する方法はいくつもありますが、確度の高い予測をする際には関連政策のリサーチが役立ちます。
政策による制度変更によって生まれる顧客行動の変化から、どのような需要が生まれるかを予測します。
政策起点で新たな需要が生まれた例として、ふるさと納税の返礼品比較サービスがあります。ふるさと納税は2008年度に始まりましたが、2015年度に寄付控除額の大幅拡大があり、返礼品市場が一気に過熱しました。その頃の返礼品の比較サービスはスタートアップが中心で事業を大きく成長させました。
関連政策のリサーチ方法
政策は各省庁の政策一覧ページにまとまっています。リサーチに特化したAIを活用して情報を集めましょう。
関連する政策であれば何でもいいわけではありません。関連する政策の中でも、行動変化が起こりそうな政策・施策を参照します。例えば、啓蒙活動・ガイドラインの発表のような施策では行動変化が起こりづらいです。逆に、義務化やインセンティブの強化などの制度変更だと顧客の行動変化が起こりやすいです。
例えば、ソーラーパネルに関する政策をAIがリサーチすると次のような結果が出ます(大量の結果からいくつかピックアップしたものです)。
これらの政策から、「太陽光パネルのリサイクルが増える」「窓や壁にも太陽光パネルが設置される」「個人宅への太陽光パネル設置が増える」といったトレンドを予測できます。
トレンドが見えたら、どのような需要や課題が生まれるかを連想します。例えば、個人宅へのソーラーパネル設置が進むとデザイン性の高いソーラーパネルを求める顧客が生まれる可能性があります。壁面や窓にソーラーパネルが設置されるようになると、従来のクリーニング方法では対応できない可能性があります。
さらに、こういった需要や課題が本当に生まれるのか追加でデスクリサーチを行い、自社のアセットで解決策を作れる場合は事業アイデア化します。
市場の「現象」:市場独自の習慣・行動を探す
「現象」は、市場ごとの特有の文化、商習慣、非合理的な行動などを指します。すでに顧客の行動として存在しているものの、まだ本格的には事業化されていないことに目を向け、そこから新しい事業を生み出せないか検討します。
市場の予測に基づいた情報よりも、現象のほうが実際の行動として起こっている分、信頼性が高いといえます。ただし、現象があっても必ずしも顧客がお金を払ってくれるとは限りませんので、顧客がお金を払うような現象を探す必要があります。
現象のリサーチ方法
現象のリサーチでは、基本的には自分でその市場を体験して「面白い」と感じた現象をメモします。実感に基づくのが理想ですが、難易度が高く時間がかかるため、多くの市場をリサーチする時間が十分にとれない場合は、リサーチに特化したAIで簡易的にリサーチすることも検討します。
現象のリサーチでは対象市場の事例を3つの切り口で調べます。
▶対象市場で「売り切れ」「入手困難」など、需給バランスが崩れている事例
例えば、米国では限定スニーカーが抽選直後に完売し、転売サイトでは真偽も不明な高額品が横行していました。この現象に着目して2016年に鑑定・エスクロー付きスニーカー取引所のStockXは誕生しました。価格の透明性と安全性を提供し、ユーザーを急拡大し、現在はストリートウエアや高級時計などのカテゴリに展開しています。
▶対象市場で「非合理的な商習慣」「顧客に共通する行動」など、独自文化の事例
例えば、スマートバンクのプリペイドカード兼家計アプリ「ワンバンク(旧B/43)」は、夫婦・同棲カップルが「片方が立て替え、後日精算」「共有財布や表計算で手入力管理」といった煩雑な習慣に着目して誕生しました。2人に同時発行されるカードで支払うと明細が即共有され、負担額と残高を自動集計されます。
共同口座を持てない日本特有の不合理を解消し、家計管理を“2人で見える化”する新しい金融体験を提供しています。
▶対象市場で「増加しているトラブル」など、課題の事例
例えば、宇宙衛星の打ち上げでは、太陽活動を中心とした「宇宙天気」の影響で、人工衛星の打ち上げや運用で想定外のトラブルが増えています。2022年にはSpaceX社の49機のStarlink衛星のうち最大40機が失われ、2024年にはオーストラリアのカーティン大学の超小型衛星が予定より早く大気圏に突入するなど深刻な事象が相次ぎました。
このような現象から高精度の宇宙天気予報の需要が高まる予測ができます。
このような3つの切り口でAIを活用してリサーチを行います。例として、ソーラーパネルに関する現象をAIがリサーチすると次のような結果が出ます(大量の結果からいくつかピックアップしたものです)。
これらの現象から、例えば「蓄電池の比較サービスの需要が今後高まるのでは」「フェンス利用に特化して、耐久性や垂直設置が可能なソーラーパネルの需要が高まるのでは」といった仮説を立てることができます。
阿部 拓貴
CINCA代表取締役 社長







