「理想の田舎」と「現実の共同体」
移住から2年が過ぎた頃、違和感の輪郭はくっきりしてきました。
自然の中で自由に暮らすというイメージで選んだ田舎暮らしは、実際には地域の歴史や関係性、役割の中で営まれる共同体の生活でもあります。そこに適応しなければ一員にはなれないという現実に直面し、夫妻は「私たちは生活の場所を移しただけで、共同体には入れていないのかもしれない」と感じるようになりました。
経済的な不安はありませんでした。住宅費は低く、退職金の残りにも余裕があります。それでも人との関係が築けない孤立感は、お金では埋められませんでした。
そうした状況が続く中で、ある夜、夫は静かに「戻ろうか」と口にしました。それは田舎暮らしを否定する言葉ではなく、夫婦にとって生活環境を改めて選び直そうという提案でした。
現在、夫妻は都市近郊のマンションで暮らしています。
徒歩圏にスーパーや病院があり、旧友とも再び気軽に会える生活です。地方で得た自然や静けさを懐かしく思うことはあるものの、人とのつながりが日常の中に戻ったことで孤立感は薄れました。
「地方で暮らすことが間違いだとは思わない。でも私たちの居場所ではなかった」
住まいとは建物や土地だけでなく、人との関係の中に成立するものだということを、夫妻は移住と再移住の経験を通じて実感したのでした。
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