「退職金が入るまで」の空白が怖い
慎一さんが一番凍りついたのは、残高そのものよりも、タイムリミットの問題でした。
定年は1年後。退職金が入るのは退職後。再雇用の給与は下がる可能性が高い。年金受給開始までの生活費をどうつなぐか——そこが、急に現実味を帯びたのです。
総務省『家計調査(2024年)』でも、高齢夫婦のみの無職世帯は毎月の赤字を貯蓄で補う構造になりやすいことが示されています。貯蓄が薄いまま定年を迎えると、想定以上に不安定になります。
その夜、慎一さんは通帳を閉じて言いました。
「責めたいわけじゃない。今から立て直そう」
美和さんは小さくうなずきました。
「ごめん。怖くて言えなかった」
翌週から夫婦は、支出を3つに分けて棚卸しを始めました。
①固定費(住宅、保険、通信)
②親族支援(親の医療・生活)
③突発費(家電、冠婚葬祭)
「堅実」であったつもりでも、家計が共有されていないと、老後設計は簡単に崩れます。老後の安心は、家計の可視化から始まるのかもしれません。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
