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母が信じ込んでしまった理由
今回、しっかり者だったはずのマツさんがここまで強くデマを信じ込んでしまった背景には、彼女自身の戦後の体験がありました。マツさんがまだ子どものころ、日本が敗戦。その後国内では急激なインフレが発生し、それを抑えるために政府は預金封鎖と新円切り替えを断行しました。昨日まで使っていたお金が使えなくなり、家族が持っていた預金が自由におろせなくなる――。その強烈な原体験が、今回の「新紙幣発行」というニュースと結びつき、眠っていた不安を一気に膨らませてしまったのです。
確かに、日本の国債残高は巨額です。しかし、その他の指標も踏まえて評価すると、日本の財政はほかの先進国と比較しても悪いといえる状態ではありません。少なくとも、現代の経済環境において、戦後のような預金封鎖や通貨の切り上げにまで発展する可能性は極めて低いといえます。
2024年の新札発行はあくまで「偽造防止」「紙幣の刷新」が主目的であり、通貨の価値や単位を変えるものではありませんでした。しかし、「旧札は使えなくなる」「借金を減らすための準備段階」といった話が一人歩きし、マツさんのように不安を覚える高齢者は少なくなかったのです。
こうした不安を利用し、国内では営業活動が禁止されている海外金融商品への勧誘や海外での口座開設が流行り、あろうことか怪しい投資話へ誘導する業者も存在します。マツさんが紹介された商品は、紹介者も善意による思い込みで勧めていたため大事には至りませんでしたが、こういった「社会不安」を利用するのは、詐欺師や悪徳業者の常套手段です。
2026年は「警察」を騙る詐欺が横行
2年前の騒動で特筆すべきは、駆けつけた本物の警察官の言葉でさえ、マツさんには届かなかったという事実です。制服姿の警察官に「詐欺ですよ」と諭されても、マツさんは「国とグルになって騙そうとしている」と思い込み、その場では決して納得せず、息子である田村さんが時間をかけて説得することで、ようやくマツさんは落ち着きを取り戻しました。それほどまでに、高齢者の「思い込み」を解くのは難しいものです。
そして2026年のいま、詐欺師たちはこの「警察への反応」を逆手にとって攻撃を仕掛けるケースが増えています。近年、急増しているのが「警察関係者を名乗る詐欺」です。一般の人にとって、警察からの連絡は非日常でしょう。「警察です」と名乗られると、驚きのあまり思考停止し、受話器の向こうの指示に従ってしまう――それが犯人の狙いです。
しかし、会ったこともない電話の相手を、肩書きだけで信じてはいけません。対策はシンプル。警察官が捜査で個人の携帯電話を使ってくることはないため、個人の携帯番号なら即座に切りましょう。また、「部署の番号を教える」といわれても、絶対にかけないこと。必ず自ら調べた警察署の代表番号にかけ直し、職員の実在を確認してください。判断がつかない場合は、警察相談専用電話「#9110」へ相談することをお勧めします。

