「残業手当はありません」…日本人より働く時間が短いが、GDPは日本の1.37倍“北欧・スウェーデン”。日本人が思わず聞き返した、現地の会社の〈雇用契約〉に書かれた“意外な一文”の本当の意味

「残業手当はありません」…日本人より働く時間が短いが、GDPは日本の1.37倍“北欧・スウェーデン”。日本人が思わず聞き返した、現地の会社の〈雇用契約〉に書かれた“意外な一文”の本当の意味
(※写真はイメージです/PIXTA)

OECD(経済協力開発機構)の統計では、23年のスウェーデンの1人当たり平均年間総実労働時間は1431時間で、日本の9割以下に過ぎない。しかし、購買力を考慮して比較した1人当たりのGDP(世界銀行、24年)はスウェーデンが日本の1.37倍で、平均年間賃金(OECD、24年)も1.22倍に上る。いったいなぜ、日本より働く時間が短いスウェーデンのほうが上回るのか? スウェーデン在住の佐藤吉宗氏の著書『子育ても仕事もうまくいく 無理しすぎないスウェーデン人』(日経BP)より、日本と大きく異なるスウェーデンの「残業文化」から紐解いていく。

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働き過ぎたら「別日に休み」が基本ルール

スウェーデンの「労働時間法」に、残業に関する基本的な規定がある。それによると、通常、労働時間は週40時間であり、残業は年間200時間を超えない範囲で月に50時間まで行うことができるとされている。

 

しかし、職種ごとに労働組合と業界の使用者団体が交わす団体協約によって個別の規定が設けられることも多く、その場合、残業に関しては法律よりも厳しい規定が課される場合が多い。また、手当・補償についても職種ごとに規定される。

 

残業した時間は別の日に休みを取るという形での補償が一般的のようだ。先ほどの例で挙げた自動車修理工の団体協約規定を見てみると、夜間の残業については別の日での勤務時間短縮に加えて特別手当が付く、と書かれている。

 

管理職は残業規定の“適用外”…頑張りすぎて燃え尽きるケースも

ただ、管理職になると話が異なってくる。管理職の場合、自分の裁量で日々の勤務時間を延長または短縮する余地が与えられているため、残業の規定が適用されず、また残業手当も支払われないことが多い。

 

SEBでの私のかつての男性上司(私と同年齢)は、一人息子の面倒を離婚した元パートナーと隔週に交代で見ていたため、平日の午後に早めに職場を後にすることもあれば、私のメールに深夜になって返事をくれることも多かった。

 

管理職では彼のように自分の裁量で勤務時間を決められる余地がある半面、1日8時間以上働いたとしても手当は出ない。そのため、成果を出そうと頑張りすぎて燃え尽きるケースなども報道で目にする。

 

仕事量が多すぎ、1日の通常の勤務時間でやりくりできないことが続けば、それは1つ上の上司と掛け合って、業務分担の再検討や人員の新規採用などを通じて解決することになる。

「職種別労働組合」の存在が残業の抑止力に

そのような例外的なケースはあるものの、なぜスウェーデンの企業では一般的に残業がないのか。

 

これには、スウェーデンでは歴史的に企業をまたいだ職種別労働組合の力が強く、長年続いた社会民主労働党政権と共に労働環境の改善に力を注いできたという背景がある。

 

職種別労働組合というのは、法務を扱う仕事をする大卒社員のための組合、経済系の仕事をする大卒社員のための組合、ITをはじめとする技術系の仕事をする大卒エンジニアのための組合、といった具合に職能ごとに産業や企業の垣根を超えて組合が存在しているということだ。

 

ここ数十年は加入する労働者の割合に減少が見られるが、ブルーカラーの労働組合だけでなく、ホワイトカラーや管理職を対象とした労働組合も、社会の中で大きな発言力を持っている(私も大学で働いていた頃は経済学部や法学部の大卒者を中心とした労働組合に所属し、今は大卒エンジニアなどの技術者を対象とした労働組合に所属している)。

 

また、サービス残業はしない、働いた分の対価はきちんと得るなどといった働く人ひとり1人の権利意識も高いうえ、転職がしやすい流動的な労働市場であるため、長時間の残業をさせるようないわゆるブラック企業からは人材が逃げ出してしまうことになる。

 

だから、企業は労働環境を整えざるを得なくなる。

 

 

佐藤 吉宗

SEB

シニア・データサイエンティスト

 

 

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※本連載は、佐藤吉宗氏による著書『子育ても仕事もうまくいく 無理しすぎないスウェーデン人』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

子育ても仕事もうまくいく 無理しすぎないスウェーデン人

子育ても仕事もうまくいく 無理しすぎないスウェーデン人

佐藤 吉宗

日経BP

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