30年前は「今の日本」と似ていたスウェーデン
スウェーデンでは子育てと仕事の両立がしやすい。完全な男女平等までにはまだ道半ばではあるものの、男性でも女性でも自らの希望で自分の能力を生かせる仕事をしつつ、子育てと両立することも可能な状況は、日本の現状と比べるとはるかに生きやすい社会だと感じる。
しかし、スウェーデンがずっと昔から、現在のような社会を達成してきたわけではない。
1960年までさかのぼってみると、スウェーデンでも既婚女性の75%は専業主婦だった。スウェーデンの歴史を振り返りながら、日本で男女平等の社会を実現するためのヒントを考えていきたい。
「男性1人が稼ぐ社会」の維持が当然だった
公民権が女性に拡大されたのは21年だったが、60年代になってもスウェーデン国会における女性の議員比率は10%と低いものだった。20世紀を通じてスウェーデンの社会保障政策を形づくる中心となったのは、ブルーカラーが多い労働組合とその支援を受けた社会民主党だった。
しかし、組合員の大部分を占めていた男性にとっての当時の主要な課題は、男性労働者を取り巻く労働環境や雇用状況の改善、そして、妻や子を養っていけるだけの水準に給与を引き上げることだった。つまり、男女の性別分業を前提とした「夫婦のうち男性が1人で稼ぐ社会」の維持が当然とされ、女性が家庭の外で働ける社会をつくることには関心が薄かった。
さらに、賃金が男性よりも比較的安かった女性労働力が労働市場に加わることで、自分たちの賃金も一緒に下がってしまうことを危惧したため、女性が働くことにはなおさら消極的だった。
女性たちの意見も分かれる
女性たちの間でも意見は分かれていた。当時の働く女性の多くにとって、労働環境や賃金は決して良いものではなかった。そのような環境であくせく働くくらいなら、家庭で専業主婦になることのほうがいいと思う女性もいた。
その一方で、専業主婦たちは家庭の外の社会とのつながりが薄くなって孤立感を抱きやすいうえに、どれほど家事・育児に専念しても、給与や有給休暇に相当する報酬や見返りを得られるわけではない。
そのため、自分の生き方に自信を持つことが難しく、その悲痛の声は当時の新聞やラジオ番組でも多く取り上げられていたという。また、教育を受け、社会で自分の力を生かしたいと願う若い女性にとって、その先に待っている現実はやるせないものだった。


