旅の半年後に起きた想定外
転機は、帰国から半年後に訪れました。妻が転倒し、圧迫骨折で入院したのです。
「医療費自体は高額療養費制度があるので上限があります。でも、差額ベッド代や通院交通費、リフォーム費用がかかりました」
手すりの設置、段差の解消などで、自宅の改修に約120万円。日本の公的医療保険には高額療養費制度があり、自己負担額には上限があります。しかし、対象外となる費用(差額ベッド代、先進医療、住宅改修など)は別途必要です。
「旅行のあとだったので、心理的なダメージが大きかったです。“あのときの数百万円があれば”と、正直思いました」
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によると、60代・二人以上世帯でも、老後生活について「不安がある」と答えた人は多数派です。一定の金融資産を持っていても、不安はゼロにはなりません。
「旅行を後悔しているわけじゃないんです。でも、“余裕資金”のつもりが、“生活資金”だったと気づきました」
現在、夫妻は支出計画を見直しました。
●年間の取り崩し上限を設定
●医療・介護予備費を別枠で確保
●大型旅行は数年に一度に限定
「夢は大事。でも、“夢のあと”まで設計しないといけないと学びました」
老後資金2,500万円という数字は、決して小さくありません。ですが、
●生活費の赤字補填
●医療・介護
●住宅修繕
●レジャー支出
が同時に発生すると、取り崩しのスピードは想像以上に速くなります。
「また船旅に行きたい気持ちはあります。でも次は、もう少し短く、身の丈に合った形で」
長谷川さんは笑ってそう言いました。
豪華な旅は、確かに人生を豊かにします。同時に、“帰ってきた後の現実”まで見据えた資金設計が、これからの老後には欠かせないのかもしれません。
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