「終の棲家」にするはずが……
この女性のような「建て替え費用が払えない」という問題は全国的に深刻化しており、高齢で低所得の居住者の多くが直面している。
では、そうした反対組は、どのような道をたどるのか。多くは金銭清算型といって、反対した住民は「時価相当額の金銭」で持分を清算され、建物の所有権を失うことになる。
この女性もそうすることが可能だった。しかし、である。この「時価相当額の金銭」は市場価格を基準とするも、とても立ち退きに十分な額ではなかった。たったの400万円だったのだ。
とはいえ、裁判で争う余力もない。仕方なく賃貸物件を探すも、2人は高齢のため断られてしまう。ようやく見つけたのは、駅から歩いて30分以上かかる、月5万円の物件だった。
引っ越し費用や敷金・礼金などで50万円以上かかり、さらに高齢の母親の病院や介護の費用などで、5年後には400万円がなくなった。
年金の月12万円から5万円の家賃を引けば、1か月に使えるのは7万円である。2人はひもじい生活を強いられている。
駅へと向かう途中に、かつて住んでいた団地がある。建て替えが終わって雰囲気が明るくなり、子供たちの笑い声が絶えない。「ここは私や母の終の棲家になるはずだったのに」と呟き、破産間近の人生にため息をつくばかりの女性であった。
「安いから」で古い物件を選ぶことのリスク
国土交通省の予測によると、築40年以上の分譲マンション数は、2023年末で約137万戸に達しており、今後も増加が見込まれている。この女性が住んでいた団地のように、建て替えが実施されるケースは増えていくことが予想される。
しかし、建て替えが実施された場合、住んでいた部屋と同程度の部屋に移るとなると、追加費用は必ずかかる。入居までの仮住まいの費用もかかる。そのため、古い集合住宅に住んでいる場合や、今後住む予定がある場合、それ相応の貯蓄をする必要がある。そうした準備を怠れば、路頭に迷うことも十分あり得る。
「安いから」という理由で古い物件を購入するのは危険だ。物件の築年数は必ず確かめておこう。
永峰 英太郎
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