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シンガポールへの駐在が決まった夫
東京都内で暮らす横山杏さん(32歳・仮名)は、貿易事務として商社に勤務しています。夫の翔太さん(33歳・仮名)も同じく商社マン。妻の年収が600万円、翔太さんの年収は1,000万円で、世帯年収は約1,600万円です。
2人は3年前、友人の紹介で知り合い、ほどなく結婚しました。結婚後も共働きを続け、都内で忙しいながらも安定した生活を送ってきました。そんなある日、翔太さんに転機が訪れます。シンガポールへの海外駐在が決まったのです。
「ずっと海外志向だったので、正直うれしかったですね」
翔太さんはそう振り返ります。学生時代から「いつかは海外で働きたい」と考えており、今回の話はキャリアの節目でもありました。
杏さんも、海外旅行が好きで、大学時代は外国語学部で学んでいました。翔太さんは、当然のように「一緒についてきてくれる」と思っていたといいます。
ところが——。
「私は、ついていかないわよ」
杏さんはきっぱりそう告げました。思わず翔太さんは言葉を失いました。
「いつか海外に住みたいって言っていたじゃないか。離れて暮らすことになってもいいの? 駐妻になれるんだよ?」
詰め寄るように聞いた翔太さんに、杏さんは静かに、しかしはっきりと返したといいます。
「バカにしないでくれる? あなたは何も分かっていない」
杏さんが帯同を拒んだ理由は、シンプルでした。
「私がついていったら、仕事を辞めることになる。今の会社は出社が必須だし、海外からリモートで続けられる仕事じゃない。戻ってきたときに、今のポジションが保証されているわけでもない」
それは一時的な休職ではなく、「キャリアの断絶」だと杏さんは言います。
「正直、怖いんです。一度レールを外れたら、同じ場所に戻れないかもしれない。それが現実だと思っています」
翔太さんが両親に相談すると、「あなたがついていかないなんて信じられない」「普通は奥さんが支えるものじゃないの?」と驚かれました。けれど杏さんには、もう一つ、どうしても拭えない理由がありました。
