「年金の繰下げ」も「生活保護」も選べなかった理由
老後の生活を支える制度として、「年金の繰下げ受給」や「生活保護」などもありますが、松下さんはこう語ります。
「70歳から繰下げれば年金は増えると聞きましたが、5年間収入なしで生きていく自信がなかったんです」
また、生活保護についても「行政に頼るのは気が引ける」「手続きが煩雑そうで怖かった」と話します。
「たしかに、誰にも頼らずに働けているのは、ありがたいと思っています。でも、週5で働いても“自由に使えるお金”が月に1万円あるかないか。これを“豊かな老後”とはとても言えませんよね」
松下さんがいま不安に感じているのは、「体力の限界が来たとき」のこと。
「70歳になった今でも腰が痛くて毎朝湿布貼ってから出勤しているんです。でも、これ以上年を取って体を動かせなくなったら、どうすればいいのか……」
アルバイト先でも、70代半ばで仕事を辞めざるを得なかった同僚を見送ったといいます。
「“じゃあこれからどうするの?”と聞いたら、“なんとかなるだろう”と笑っていましたけど……。僕はそう思えない」
「老後は年金でなんとかなる」という考えは、今の現役世代にとっても、すでに高齢を迎えた世代にとっても通用しなくなりつつあります。働けるうちは働く。しかし、「働けなくなったとき」の支援があいまいなままでは、安心して老後を迎えることはできません。
「長く働ける社会」と「働かないと暮らせない社会」は、似ているようでまったく違います。 “働けるうちに働く”だけではなく、“働けなくなったとき”への想像力と備えが、今こそ求められているのかもしれません。
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