Uターン移住を実行して気づいた「まさかの事実」
美佐子さんは都内のマンションを売却し、高知の実家に移り住みました。仕事は地元企業の事務職として再就職。収入は東京時代の半分近くまで下がりましたが、生活費に問題はまったくありません。
ところが、生活が落ち着くにつれて、少しずつ違和感が積み重なっていきます。まず、不便さ。山間部の実家から最寄りのスーパーまでは車で30分。もちろん歩ける距離ではありません。
「時々実家に戻ってきてましたから、重々わかっていたはずなんです。でも、いざ暮らすとなると、やっぱり不便なんですよ。一時的な帰省とはわけが違う。通勤は車なんですが、夜は真っ暗。思いのほか神経を使います」
何より戸惑ったのは、人との距離でした。
「輪の中に入るのが、こんなに難しいとは思いませんでした」
同級生の多くはすでに地元を離れ、県内の別エリアや県外に移り住んでいました。周囲は自分より年上の人ばかり。東京から戻ったバツイチというプロフィールは近所にも会社にも、なぜか知れ渡っていました。生まれ育った土地でしたが「よそ者」には違いありませんでした。
そんなある日、東京の友人から届いた1通のLINE。
「みんなで飲んでるよ」
スマホのビデオ通話でつなぐと、画面の向こうにはにぎやかな声。かつては自分もそこにいましたが、通話が切れた後には静かな部屋でひとり。そのとき、美佐子さんははっきりと気づきます。自分は、東京が好きだったのだと。
夜でも明るい街、あらゆる物が揃うお店、気の置けない友人たち。嫌だと思っていた人混みすら恋しくなったといいます。
