就労の設計がないと、分与金は“生活費に溶ける”
離婚時にまとまったお金を得ていても、生活費の赤字が続けば数年で大きく減る可能性もあります。生活費は、2人分が1人分になるからといって単純に半分になるわけではありません。たとえば、毎月5万円の不足なら、1年間で60万円、10年では600万円が消えていきます。医療や介護が必要になったときの「万が一」を踏まえると、日々の生活に充てられる金額は思ったよりも少ないのです。
また、年金についても注意が必要です。配偶者が厚生年金もしくは共済年金に加入していた場合、離婚時に年金分割を申請できますが、分割できるのはあくまで婚姻期間の記録のみ。婚姻期間が長いほど、対象となる記録は増えますが、年収によっても金額は変わります。
なお、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、離婚分割により受け取れる年金額は月平均3万3,575円、3号分割のみの場合は女性で月8,317円です。「思ったよりも少なかった」という人は多いです。
離婚後も生活の安定を図るためには、就労と年金をセットで組み立て、家計収支の実態と照らし合わせながら整合性を確認しないと成り立たちません。
離婚前に確認しておきたい「個の生活防衛」チェックリスト、7つ
離婚は感情の問題ですが、思い描いている生活は数字で崩れる可能性があります。離婚協議に入る前のチェックリストとして、以下を参考にしてください。
〇住まいは「婚姻前取得」か「婚姻後取得」か(名義・取得時期)
〇住宅ローン残高の推移(婚姻時点/離婚時点)
〇現預金はいつ形成したものか(婚姻前・婚姻後・相続など)
〇退職金・企業年金(DC含む)の見込みと受け取り方
〇厚生年金の加入状況(年金分割の対象期間)
〇離婚後の住まいの選択肢(買う/借りる/身内の協力)
〇就労の現実性(何歳から、どれくらい、いくら稼ぐか)
離婚は人生の再設計が迫られる大きなインパクトをもつイベントです。感情が先に立つ局面ほど、数字と制度を味方につけて「生活の継続性」を確保することが重要になります。
失ったのは「見通し」だった
Aさんは離婚により失ったのは、「老後も大丈夫」という見通しでした。
離婚の大きなダメージを回収し、“再出発”とするためには、住まいや年金、働き方、ライフプランなどを統合し、1つの設計図として整えることがカギとなります。リタイア前後の離婚は、人生の最後の大きな分岐点となり得るでしょう。だからこそ、個の生活防衛戦略が重要となります。
内田 英子
FPオフィスツクル代表
ファイナンシャルプランナー
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