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ケーススタディ(2)IT企業創設者・鈴木康介さんの場合
次に、鈴木康介さん(仮名)の例を見てみましょう。康介さんは現在55歳、とあるIT企業の創業者です。30代前半に、小さな貸オフィスで数名のチームとともに事業をスタートさせました。日夜、事業経営に没頭し、会社は順調に成長。10年ほど前に上場も果たしています。
康介さんは上場後も多忙な日々を送っていましたが、時価総額100億円に達した会社の株価を見ていると、自分の資産の大半が自社株に偏っていることへの不安が頭をよぎるようになったそうです。発行済株式総数の過半を持つ自社株が自己資産の中心であり、もし会社の株価が大きく下落すれば、個人の資産も一瞬で大きく目減りしてしまいます。
そんな話を仲間うちでしていたことから、弊社のクライアントである某上場企業のオーナーを通じて紹介を受けました。その後、3回の面談を行い、今後の投資戦略を策定していきました。
ちなみに初回の面談では、康介さんの人となりや家族構成、資産の状況、リスク許容度などを把握することを目指しました。康介さんにふさわしい資産運用を助言するには、何はなくとも「顧客のことをよく知る」ことが大切だからです。
2回目の面談では、収集した情報をもとに策定した投資戦略と、康介さんの目指す資産運用のゴールをすり合わせました。資産運用のゴールとは、「なんのために資産運用するのか?」を明確にしたものです。目指すべき方向性の違いによって、当然、投資戦略も変わってきます。
3回目には、まず投資戦略のグランドプランをいくつか提案。ディスカッションで細部を確認し、決定事項を盛り込んだ投資戦略を策定して、具体的なポートフォリオを提示しました。
その後、必要な準備と手続きを経て、正式に資産運用のお手伝いをスタートすることになりました。リスク管理の重要性を理解していた康介さんは、オルタナティブ投資や債券投資に目を向けることにしました。自社株以外の多様な資産クラスへ投資することで、リスクの分散を図ったのです。
ただし、手持ちのキャッシュはさほどなかったため、資金調達が課題になりました。もちろん自社株を売却すれば多額のキャッシュを簡単に手にできますが、上場企業のオーナーであるがゆえに、自社株の売却ができるタイミングは限られます。市場関係者や取引先などから、いらぬ疑念を持たれても困ります。
そこで、証券担保ローンを活用することにしました。証券担保ローンを使えば、自社株を保有したまま担保にして資金を調達できます。15億円を調達し、そのうちの約6割を債券に投資しました。米国債を中心に投資し、年利4%程度のキャッシュフローを獲得することで、証券担保ローンの借入金利を賄いつつ、資産全体の土台を支える役割を期待してのことです。
残りの約4割の資金は、不動産投資と株式、オルタナティブ資産に分散投資しました。不動産投資については都心のタワーマンションに加え、海外の物件にも投資予定です。もちろん資金の有効活用のため、物件自体を担保にした借入金も活用します。株式については、海外も含めてベンチマークしたい企業の株式や、時代の流れを把握するための個別企業を選定しています。
オルタナティブ投資については、プライベートエクイティが中心です。康介さんにはかつての駆け出しの頃、資金的に大変苦労した経験があったことから、若い起業家を資金面から応援することにしたそうです。あるベンチャーコミュニティのイベントで、斬新なアイデアと熱い情熱を持っている若手起業家と出会い、個人投資家(エンジェル)として最初の出資を決めました。それを皮切りに、有望なスタートアップへの投資を何件か実行しています。
また世界的な未上場企業への投資や音楽著作権、インフラファンドといった、自社株や債券、不動産とも異なるアセットクラスへも分散して投資しています。
