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富裕層の資産を守るスイス発「プライベートバンク」の歴史
プライベートバンキングの本場と言えばスイスですが、その起源は十字軍遠征の時代(11世紀)にまでさかのぼります。
十字軍に参加する騎士たちは、本国に残す財産の管理をスイスの修道院や聖職者に頼みました。その後、商人や職人などの非聖職者の市民がその役割を引き継ぐようになり、自分の家や店舗で金貨や貴重品を預かり、手形や為替などの金融取引を行うようになりました。これがプライベートバンクの始まりとされます。
フランス革命やナポレオン戦争などが起きた18世紀から19世紀にかけてのヨーロッパの混乱期にも、スイスは中立国として政治的な安定を保ち、オスマン帝国を除く全ヨーロッパ各国代表が集まった1815年のウィーン会議において、永世中立国として承認されました。このこともスイスのプライベートバンクに対する信頼感を高め、ヨーロッパ各国から富裕層が資産を預けるようになりました。
この時期には、有名なプライベートバンクが続々と設立されています。たとえば、ロンバー・オディエは1796年設立、ピクテ銀行は1805年設立、ジュリアス・ベアは1890年に創業しています。
また、1934年にはスイス銀行法が制定され、銀行秘密や口座番号制度などが導入されました。これらの制度は、プライベートバンクの顧客のプライバシーを保護する役割を果たしました。
伝統的なスイスのプライベートバンクは、「パートナーシップ制」をとってきました。2人以上の者(パートナー)が金銭等を出し合い、共同で事業を営み、最低でもひとり以上のパートナーが「無限責任」を負う経営形態です。
無限責任とは、事業で損失が発生した場合には、あらかじめ提供した金銭等に限定せずパートナー個人が経済的な責任を負うことであり、最後までその返済を保証する制度です。つまり、パートナーは事業運営において中心的な役割を果たすと同時に、その経営責任をも引き受けます。
万が一の倒産や破綻のときの負担はとてつもなく大きく、平たく言えば、ビジネスに失敗したときには金融財産や不動産はもちろん、住んでいる家屋敷まですべてを失ったうえに、莫大な借金も背負うことになります。
これがあるからこそ、伝統的にスイスのプライベートバンクは取引相手や顧客から高い信頼を得てきました。ただ、時代の流れもあって、無限責任の銀行経営が国際的な金融リスクを高めてしまうことが指摘されるようになり、加えて国際的な規制や行政の監督に対応できないことから、この制度は2014年に禁止されてしまいました。
こうした歴史的経緯から、老舗のプライベートバンクにとっては、最大の顧客は創業ファミリー自身です。創業家のメンバーがビジネスを所有し、かつ実際に経営にあたっています。こうした点も、超・富裕層の資産を後世に守り伝えるための長期的で堅実な運用を担保している、と評価されています。
