離婚を決意→妻が始めた「秘密の作業」
将司さんは恵子さんを殴ったことはないし、浮気もしていません。しかし、日常的な暴言や人格否定的な言葉は恵子さんにとって苦痛以外なにものでもありませんでした。
専門家らのアドバイスを受け、恵子さんが始めたのが「記録」です。恵子さんは毎日日記をつけ、将司さんから浴びせられた暴言の日時や内容を記録するようになりました。また、LINEで送られたきつい言葉や友人に相談した記録、さらには心療内科の受診記録も。
これらはすべて離婚理由として評価されうる「モラハラ」の証拠です。熟年離婚では、決定的な1度の出来事よりも、長期間にわたる精神的苦痛が重視されるケースも少なくありません。
離婚を告げるタイミングは「退職金受け取り」を待ってから
恵子さんは退職金が振り込まれた直後に離婚を切り出しました。理由は明確。退職金は婚姻期間中に形成された財産と評価され、財産分与の対象になるからです。
今回のケースでは、以下のように整理されます。
・夫の退職金:2,500万円
・婚姻期間に対応する割合:100%(勤続期間=婚姻期間と仮定)
・財産分与の基本割合:2分の1
つまり、恵子さんの取り分は約1,250万円です。ただし、実務上は、退職金の財産分与割合はおおむね2分の1が目安とされますが、具体的な金額は婚姻期間や事情により調整されることもあります。
退職前の場合、退職金は「将来の不確定な収入」として評価が難しくなり、分与額が調整されたり、交渉が難航したりするケースもあります。
恵子さんが離婚を切り出したタイミングは、冷静な計算と長年の忍耐が込められていたのです。
「年金分割」で老後資金を確保
さらに重要なポイントが「年金分割」です。将司さんの厚生年金については、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を最大50%まで分割できます。
仮に将司さんが受け取る厚生年金が月18万円だとすると、恵子さんに分割されるのはおおよそ月8万円。恵子さん自身の基礎年金(月額約6万5,000円)と合わせれば、年金収入は月額約14万5,000円です。
離婚しなければずっと将司さんの年金に依存する立場ですが、離婚後は「自分だけの年金」として安定的に受け取れる点は大きな違いでしょう。
