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繰下げは「失敗」だったのか?
では、佐竹さんの繰下げ受給は間違いだったのかといえば、そんなことはありません。
佐竹さんのもともとの年金額は月15万円、貯金も約200万円という状況のまま一人暮らしの老後に突入していたら、生活はかなり困窮していたはずでしょう。今回のケースを改めて精査すると、年金は年間約75万円増、税・国保の負担増は約19万円で、差し引きすると、実質56万円のプラスですので、老後の生活は少し楽になりますね。
貯蓄が乏しい人や、公的年金の受給額が少ない人にとって、「一生続く年金が増える」という点は非常に大きなメリットで、現役のころにできなかった資産形成の不足をカバーしてくれます。
佐竹さんにとって繰下げ自体は合理的な選択だったといえますが、問題は、税金や社会保険料の影響を事前に知らなかったことです。制度の仕組みを十分に理解し、デメリットも踏まえた活用をするようにしましょう。
繰下げすべき人、通常受給でいい人
厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によれば、繰下げ受給を選択する人は年々増加傾向にあります。一方で、全体の割合でみると、老齢厚生年金の繰下げ受給者は全体の約2%。まだ少数派といえます。
現在は最長75歳まで繰下げ可能となり、最大84%もの増額が可能です。特に、貯蓄が少ない、個人事業主で年金額が少ない人にとって、繰下げは老後の資金計画を支える有効な制度です。一方で、税金や国民健康保険料、さらには介護保険料などへの影響を度外視して選ぶと、手取り額の少なさに失望しかねません。
十分な資産がある人は、無理に繰り下げて額面を増やす必要はなく、通常どおり65歳から受け取ればよいでしょう。
大切なのは、数字上の「損得」に固執しすぎないことです。自分の健康状態、現在の資産、そしてどのような老後を送りたいかという「ライフプラン」に合わせて選ぶことをお勧めします。
小川 洋平
FP相談ねっと
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