相続でよくある後悔と背景
「まさか、こんなに早く……」
親の体調が急変したり、突然の事故や病気で亡くなったりしたとき、残された家族が最初に口にするのは、そうした言葉です。そして、次に出て来るのが、「もっと早く準備しておけばよかった」「せめて、あの時に話しておけば……」という後悔の声です。
相続に関する後悔の多くは、実は“準備の遅れ”が原因です。相続には特別な知識が必要なわけでも、大掛かりな対策をすぐに始めなければいけないわけでもありません。ただ、「何もしていなかった」「分かっていたのに、できなかった」という事実が、大きな混乱と心の負担を生んでしまうのです。
実際に私たちの元には、「相続の準備をしておきたい」と相談に来られる方が年々増えています。しかし、その多くは親御さんの体調が悪くなった後や、介護が始まってから。中には、親が認知症を発症してしまい、遺言も財産整理も間に合わなくなってしまったという事例も少なくありません。
例えば、あるご家庭では、「そろそろ相続のこととか話しておかないといけないな」と思っていたところ、80代の母親が転倒をきっかけに認知症を発症。入院と施設入所を経て、意思疎通ができなくなった頃に、子どもたちが慌てて「実家をどうするか」「預金はどうなっているのか」と動きだしました。
しかし、すでに本人の意思確認はできず、遺言書もなく、家は共有名義、預金の状況も把握できていない。結果として、相続の準備どころか、日々の生活に必要な費用の捻出にも苦労することになってしまいました。
こうした事態は、「相続=死後の話」という固定観念が根強く残っているからこそ起きてしまいます。実際には、相続準備とは「死への備え」ではなく、「これからをどう生きていくか」の備え。つまり、生前に家族で話し合い、情報を整理しておくことで、家族が直面するさまざまな局面で柔軟な対応ができるようになるのです。