授乳室のお湯が風呂代わり
そんな世間の世知辛さを知る黒綿棒が考えに考えてひねり出した対策が2つある。
1つは、外国人がアルバイトをしているコンビニに絞って利用することだ。
「日本人の気質って言うの?日本人に限って僕たちの行動を監視している傾向にある。でも、東南アジア系の人たちはおおらかっていうか、僕らがポットのお湯を使おうと電子レンジを使おうと、何も言ってこないんだよ」
2つ目は、授乳室が併設されているトイレを使うことだ。
「授乳室というのは、えてして粉ミルクを溶かすためのお湯が出る。100℃の熱湯は出ないが、60℃くらいのお湯が使える。カップ麺もアルファ化米もある程度、美味しくいただけるよ」
黒綿棒は、ほかにもこんな使い方をしていた。
「君、いつも新宿中央公園の水道で体や頭を洗っているみたいだが、授乳室のお湯を使うといい。夏場でもやっぱり体を洗うときはお湯がいいだろう。足の裏を洗うだけでも、その日の寝心地がだいぶ左右される」
聞けば、授乳室のお湯を風呂代わりに使っているホームレスは結構、多いという。それを聞いて、私は彼らの倫理観の低さを痛感した。赤ちゃんにミルクを与える場所であることを考えれば、衛生的な観点からは完全にアウトだろう。食事用にお湯を拝借するのはまだしも、風呂代わりとは……。
授乳室はもちろん、コンビニのお湯を使うのも気が引けた私は、おとなしく公園の水道でアルファ化米に水を注いだ。水の場合、完全にふやけて食べられるまでに1時間かかる。アルファ化米は、チャック式で封ができるので持ち運びも便利だ。私は水を入れたアルファ化米を鞄に戻し、電車で帰宅した。
自宅に戻り、まず炊き出しでもらったクリームシチューを温めようと、袋に書いてある説明文を読む。〈袋の封を切らずに箱ごとレンジへ〉〈レンジ加熱時この向きで箱に入れます〉……。注意書きとして、〈箱を使用せずにレンジで加熱をすると、中身が吹きこぼれます〉と書かれていた。
しかし、その「箱」とやらが見当たらない。おそらくもとは箱にクリームシチューが何袋か入れられていて、そのうちの1袋が配られたのだろう。箱に記されていたと思われる加熱時間も不明なので適当に2分ほど袋ごと器に入れて温め、ちょうどふやけたアルファ化米と一緒にいただいた。
生クリームをふんだんに使ったクリームシチューは甘く、わかめご飯の塩気とも絶妙にマッチする。災害備蓄用のビスケットはバターの風味が強く、しっかりとカロリーを摂取できそうだ。
ただ、キュウリはそのままかじるしかない。路上には味噌を常備しているホームレスもいる。そんな人がいたら、「少しもらえませんか」と話しかけていたことだろう。
國友公司
ルポライター
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