「老い先短いから値上げしないで」高齢住人の懇願
説明会はマンションの共用会議室に椅子を配置し、住民が密にならないよう間隔を空けて座ってもらいました。ブロックによって多少のばらつきはあったものの、各回ともたくさんの組合員が出席。積極的な姿勢に感謝をおぼえたものです。
説明会には管理組合理事をはじめ、管理会社の社員も同席してもらいましたが、本題の説明と質疑応答に関しては理事長の私が行いました。同じような質問が繰り返され、毎回同じように回答する。これが6回も繰り返されると回を追うごとに説明が上手くなり、自分でも感心するほどの成長ぶりでした。組合員から投げられた質問に最初は言葉を選びながら答えていましたが、何度も説明会をしていくともう立板に水。その反面、マスクを着用しながらのやりとりで声を張り上げ続けると喉を痛めてしまって、後半はしんどかったです。
説明会では組合員からさまざまな意見が寄せられました。ある高齢の女性からは「私はもう老い先短いから、値上げをしないでほしい」と懇願され、答えに窮する場面も。次の大規模修繕を行うまでには十年近く時間がありますし、修繕積立金の値上げに協力したとしてもその恩恵を受けられない可能性があることを懸念したのでしょう。もちろん、言いたいことはわかります。私も同じ立場になれば、同じ質問を投げかけるかもしれません。そうした思いが瞬時に頭の中を巡り、なんと答えればいいものか言葉に詰まりました。
その他にも「値上げは仕方ないかもしれませんが、いくらなんでも3倍は異常ですよ。2倍じゃダメなんですか?」など、さまざまな質問や意見が飛び交いました。「2倍じゃダメなんですか?」と聞いたときは、昔有名になった「2位じゃダメなんですか?」のフレーズがフラッシュバック。一気に、責められているような気分になりました。
「どうしてこれまでの理事会は修繕積立金の値上げをしてこなかったんでしょうか?」という質問を受けたときは、非常に耳が痛かったです。「私も知りたいくらいです!」と言い返したいくらいでした。私も管理組合の役員になるまで無関心だったため、残念ながら、過去の経緯を語れる人は管理人も含めて一人もいません。過去の理事会を責めるつもりはありませんが、彼らが見直しをしてこなかったおかげで、今回の大幅な値上げに踏み切らざるを得なくなったのです。
ぽつぽつ恨み言をこぼしながらも無事に説明会を終え、臨時総会の前の大きなハードルはなんとかクリアすることができました。
竹中 信勝
タワマン理事長
