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市場を揺るがす「安保リスク」と「逆差別」
安全保障上の脅威となる可能性が指摘される契機となったのは、2018年12月に中国政府がソウル市龍山区梨泰院一帯の約4,162m2(約1,256坪)を300億ウォンで購入した事件である。この土地は、大統領執務室や大統領官邸、韓国政府に返還される予定の米軍龍山基地跡(旧キャンプ・コイナー)という重要施設から約1キロ前後の地点に位置する。にもかかわらず、2025年5月に至るまで6年以上ものあいだ、この取引は国民に知らされていなかった。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領(当時)は2022年5月に大統領の執務室を龍山区に移転したが、中国政府による土地取得が明らかになっていれば、龍山区への移転を進めていたのかどうかについても疑問が残る。この土地に建物はまだ建てられていないが、諜報・偵察活動の拠点として活用されるのではないかと懸念する指摘がある。
一方、2022年以降、首都圏の住宅市場では、住宅取引が持続的に増加するなかで、投機的な動きが目立つ。高価な住宅を現金で購入したり、未成年者が不動産を取得したりしているのだ。
国土交通部が本年11月に発表した調査(2024年6月〜2025年5月対象)によると、外国人による違法疑い事例438件を調査した結果、47.9%にあたる210件の取引で違法行為が発覚。
1.海外資金の不法持ち込み
2.無資格賃貸業
3.取引金額および契約日などの虚偽申告
4.仮装贈与
などが含まれているという。韓国政府は、調査を継続するとともに、関係省庁と協議をして外国人による違法土地取引に対して、法的な制裁に乗り出す構えだ。
特に問題視されているのが、資金調達における「逆差別」だ。内国人(韓国人)は国内金融機関から融資を受ける際、LTV(住宅担保貸出比率)やDSR(総負債元利金償還比率)などの厳格な規制を受ける。対して外国人は、規制の緩い自国の金融機関で資金を調達することで、韓国の厳しい融資規制を回避できる状態にあるため、批判が強まっているのである。
政府の強力な規制対応
国民の世論の高まりを受けて、韓国政府は本年8月26日、ソウル市内全域と同市に隣接する水原市・城南市・高陽市など23市郡、同じく近隣の仁川市内の7地域を「外国人土地取引許可区域」に指定。外国人(外国法人・政府を含む)が一定面積以上の土地を購入する場合に、事前の許可を必要とする「事前許可制」を導入した。
SOHO等の小規模ビジネスに使用される目的で取引される「オフィステル」を除き、外国人が区域内で住宅を購入する場合、事前の許可に加え、引き渡し後4ヵ月以内に入居と、2年間の実居住義務が課せられる。違反した場合は、土地取得価額の最大10%の履行強制金が賦課されるされる厳しい内容だ。国土省はこれを「外国人の爆買いによる価格高騰を防ぐ措置」と説明している。
また、野党「国民の力」党からは、外国人が保有する住宅への資産税を内国人の2倍、地方税である住宅取得税を30%(30億ウォン超の不動産は50%)引き上げる法案を上程。さらに、譲渡所得税を2倍化するほか、現在、非課税になっている非居住者の賃料収入への課税などを盛り込んだ方針も示されている。
「事前許可制」導入による効果
このような抑制策の効果か、外国人による土地取引は減少傾向にある。マンション等の集合住宅を購入し、所有権移転登記を終えた外国人は本年1月606人に。許可制が導入された8月には1,051人まで7ヵ月連続で増加したが、9月は976人に減少し、10月には560人と、半分程度まで急激に減少した。これは、2023年4月(427人)以来、最も少ない結果となった。
現地メディアの報道によると、業界関係者は「土地取引許可制の施行により、土地取引のハードルが高まった」と指摘している。
