かつて、イギリス人に「日本で作るのは不可能」と笑われたが…たった1グラムの“ムシ”で世界を制した「売上高2061億円」の岐阜の企業

かつて、イギリス人に「日本で作るのは不可能」と笑われたが…たった1グラムの“ムシ”で世界を制した「売上高2061億円」の岐阜の企業

あなたの車にも、この会社の製品が使われているかもしれない。タイヤの空気注入口にある、たった1グラムの小さな部品「バルブコア」。この分野で国内シェア100%、世界シェア50%という圧倒的な数字を誇るのが、岐阜県に本社を置く「太平洋工業」である。トヨタ自動車よりも古い歴史を持ち、かつて憧れたライバル企業さえも買収して飲み込んだ、売上高2000億円超えの“グローバル・ニッチトップ”の実力とは。田宮寛之氏の著書『日本人が知らない!! 世界シェアNo.1のすごい日本企業』(プレジデント社)より、みていこう。

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“バルブコア1本”に絞ったことが、企業躍進の起点に

じつは、バルブコア開発の裏には宗一の重大な決断があった。当時、バルブコアの開発と並行して、エンジン内でガソリンと空気が混ざり合った混合気に点火するスパークプラグの開発も進めていたのだ。

 

試行錯誤の末、製品はでき上がったものの品質が安定せず、クレームが続出。品質向上のためには莫大な資金が必要だったため、スパークプラグをあきらめてバルブコアに専念することにしたのだ。このときに経営資源をバルブコアに集中させたことが、後の企業発展につながった

 

創業88年にして、かつての「憧れの企業」が傘下に

2018年、ライバル企業のシュレーダー社からバルブ関連企業を買い取り、子会社化した。これにより、日本、アジア、北米、欧州に生産・販売拠点を有する世界四極体制が実現し、同社の世界シェアは50%となった(買収以前の世界シェアは25%)。

 

シュレーダーは、宗一が太平洋工業合名会社を設立した頃の憧れのブランドであったが、創業88年にしてこれを凌駕して傘下に収めることになった。

パンク防止や燃費向上に役立つ「タイヤ監視システム」に注力

太平洋工業ではタイヤバルブで培った技術を活かして、TPMS関連製品の製造に注力している。TPMSとは「Tire Pressure Monitoring System」の略で、タイヤ空気圧監視システムのこと。自動車の走行中にタイヤの空気圧や温度を監視し、異常を察知するとドライバーに知らせるシステムだ。

 

TPMSはタイヤホイールに取り付けるセンサー送信機と、ダッシュボードに取り付けるモニター(受信機)から構成されており、同社はセンサー送信機の生産を行っている。

 

TPMSはタイヤのパンク防止に役立つだけではない。空気圧を適正に保つことは燃費向上、すなわちCO2の削減にも貢献するのだ。

 

米国、EU、中国でも…世界で広がる「TPMS装着義務化」の流れ

1996年に5代目社長に就任した小川信也は、TPMSの開発に注力した。その結果、1999年にはTPMS送信機の販売を開始し、2001年にはトヨタ自動車の「レクサスクーペ・ソアラ」に標準装備されることになった。

 

2000年に米国で自動車の安全性に関する規制「トレッド法」が成立したことで、TPMSを取り巻く環境が一変した。

 

当時、米国でタイヤパンクによる横転事故が多発したため、2007年9月から米国で販売される新車にはTPMSの装着が義務づけられることになったのだ。この流れは世界に広がり、現在ではEU、ロシア、中国などでも義務化され、日本でも法規化が検討されている。

 

今後、TPMS関連製品は同社を牽引する有力ビジネスとなるだろう。

 

次ページTPMS技術は“意外な分野”にも応用

※本連載は、田宮寛之氏の著書『日本人が知らない!! 世界シェアNo.1のすごい日本企業』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

日本人が知らない!! 世界シェアNo.1のすごい日本企業

日本人が知らない!! 世界シェアNo.1のすごい日本企業

田宮 寛之

プレジデント社

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