ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
富裕層の資産承継と相続税 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
“バルブコア1本”に絞ったことが、企業躍進の起点に
じつは、バルブコア開発の裏には宗一の重大な決断があった。当時、バルブコアの開発と並行して、エンジン内でガソリンと空気が混ざり合った混合気に点火するスパークプラグの開発も進めていたのだ。
試行錯誤の末、製品はでき上がったものの品質が安定せず、クレームが続出。品質向上のためには莫大な資金が必要だったため、スパークプラグをあきらめてバルブコアに専念することにしたのだ。このときに経営資源をバルブコアに集中させたことが、後の企業発展につながった。
創業88年にして、かつての「憧れの企業」が傘下に
2018年、ライバル企業のシュレーダー社からバルブ関連企業を買い取り、子会社化した。これにより、日本、アジア、北米、欧州に生産・販売拠点を有する世界四極体制が実現し、同社の世界シェアは50%となった(買収以前の世界シェアは25%)。
シュレーダーは、宗一が太平洋工業合名会社を設立した頃の憧れのブランドであったが、創業88年にしてこれを凌駕して傘下に収めることになった。
パンク防止や燃費向上に役立つ「タイヤ監視システム」に注力
太平洋工業ではタイヤバルブで培った技術を活かして、TPMS関連製品の製造に注力している。TPMSとは「Tire Pressure Monitoring System」の略で、タイヤ空気圧監視システムのこと。自動車の走行中にタイヤの空気圧や温度を監視し、異常を察知するとドライバーに知らせるシステムだ。
TPMSはタイヤホイールに取り付けるセンサー送信機と、ダッシュボードに取り付けるモニター(受信機)から構成されており、同社はセンサー送信機の生産を行っている。
TPMSはタイヤのパンク防止に役立つだけではない。空気圧を適正に保つことは燃費向上、すなわちCO2の削減にも貢献するのだ。
米国、EU、中国でも…世界で広がる「TPMS装着義務化」の流れ
1996年に5代目社長に就任した小川信也は、TPMSの開発に注力した。その結果、1999年にはTPMS送信機の販売を開始し、2001年にはトヨタ自動車の「レクサスクーペ・ソアラ」に標準装備されることになった。
2000年に米国で自動車の安全性に関する規制「トレッド法」が成立したことで、TPMSを取り巻く環境が一変した。
当時、米国でタイヤパンクによる横転事故が多発したため、2007年9月から米国で販売される新車にはTPMSの装着が義務づけられることになったのだ。この流れは世界に広がり、現在ではEU、ロシア、中国などでも義務化され、日本でも法規化が検討されている。
今後、TPMS関連製品は同社を牽引する有力ビジネスとなるだろう。
