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小さくて、強くて、ズレないクリップの開発
ミズホは1919年に東京・本郷にて医療機器の卸問屋として創業した。1938年には製造部門として根本製作所を設立し、作業用義肢(ぎし)の製造を始めた。戦後、米軍病院から手術台などの修理依頼を受けたのを機に技術・知識を蓄え、医療機器メーカーとしての基礎を築く。
そして、1976年に名古屋大学の杉田虔一郎(けんいちろう)医師の指導のもと、新しい脳動脈瘤クリップ「杉田クリップ」の開発に成功した。
それ以前のクリップには、
1.脳動脈を挟み込む力が弱く、クリップの位置が当初挟んだ位置からずれてしまう
2.脳動脈瘤の根元を挟む部分の幅が広く、脳のほかの部分を傷つけてしまう
といった欠点があった。杉田クリップはこうした欠点を克服した画期的なクリップだ。
文房具のクリップでもわかるように、挟み込む力を強くするにはクリップを大きくしなければならない。本来、クリップのサイズを小さくすることと挟む力を強くすることは相反するが、同社は両立させた。ミズホはバネのコイルを二重構造にして、安定的に強い力を維持できるようにした。また、血管に当たる部分に精密な筋目を入れることで血管を挟みやすくした。
画期的な開発に成功した結果、杉田クリップは米国のFDA(食品医薬品局)のクラスⅢの審査基準を満たし、日本の医療機器専業メーカーとしては初めて、クラスIII医療器材の米国での販売が許可された。
杉田クリップ以外の優良製品
ミズホは脳動脈クリップ以外にも、さまざまな医療器具を手がけている。
1959年に世界で初めて全油圧駆動式の手術台を開発。さらに1968年には現行の手術台の基本仕様となる電動全油圧駆動手術台を製品化し、「手術台のミズホ」としての地位を確立する。現在では手術台の国内シェアは約65%、整形外科専用手術台の米国シェアは約80%にまで成長した。
そのほか、現在は新潟県工業技術総合研究所と共同で人工股関節部品「ステム」の研究を進めている。
骨や関節軟骨が変形し痛みや機能障害が出る「変形性股関節症」の場合、患者の傷んだ股関節を取り除いて人工股関節に置き換える手術をする。人工股関節の主要部がステムで、大腿骨(だいたいこつ)内部に埋め込む部分(埋入(まいにゅう)部)と、骨盤側に突き出た部分(ネック部)から構成される。
埋入部は柔軟性が必要で、ネック部は強度が必要だが、一つの金属が両方の特性を併せ持つことはない。これまで、各メーカーは熱処理の工夫で二つの性能を持たせようとしたが、うまくいかなかった。
そこで、ミズホと工業技術総合研究所は柔軟性のあるチタン合金と、強度が高いコバルトクロム合金を接合し、ステムを形成する技術を開発している。異なる金属を溶接するのは簡単なことではないが、すでに試作品は完成し製品化を目指す段階だ。
