「いずれ出ていくと思っていた」想定外に長引いた“親子同居”
「まさか、こんなに長く一緒に暮らすことになるとはね…」
東京都郊外の住宅地に暮らす78歳の田島節子さん(仮名)は、50代の息子2人と同居を続けています。夫は10年前に他界し、現在の家計は、月19万円ほどの遺族年金と夫のわずかな預貯金に頼っています。
息子たちは大学を卒業した後、就職はしたもののどちらも長続きせず、40代になるころには完全に“非正規の渡り歩き”状態に。長男は現在もアルバイトを続けており、次男は近年ほぼ無職。「仕事が決まらない」と言っては家にこもる日々が続いています。
「最初は、一時的なものだと思っていたんです。『次の職が見つかるまで』とか、『資格を取るための勉強期間』とか…。でも、気づけば10年、20年と経っていて、このまま私が死ぬまで、彼らの食事や生活の世話をし続けるのかと考えると、息が詰まりそうになります」
節子さんの一日は、炊事、洗濯、掃除といった家事でほぼ終わります。息子たちが家にいるため、朝昼晩の食事の用意が欠かせません。たまには外食を…と思っても、「そんな余裕あるの?」と息子たちに言われる始末。休日も旅行どころか、近所の買い物以外は外出する気にもなれず、「家に“居場所がない”と感じることさえある」と語ります。
「正直、2人に出ていってほしいと思ったことも何度もあります。でも行き先がない。自立できる経済力がない。結局、どこにも追い出せないまま今日まで来てしまいました」
近年、「高齢親の年金に頼って暮らす中年の子どもたち」が社会問題として注目されるようになってきました。いわゆる「8050問題」にも通じるこの状況。親が80代、子が50代となるころには、双方に十分な収入がないまま“高齢者同士の扶養”のような構図が生まれ、生活困窮に陥るリスクが高まります。
生活保護などの支援制度もありますが、同居している場合は「世帯単位」で収入を合算されるため、親の年金額が一定以上あると子ども個人が生活保護を受けることは困難です。親が亡くなったあとに初めて「経済的に詰む」ことも珍しくありません。
