(※写真はイメージです/PIXTA)

10月13日で閉幕を迎えた大阪・関西万博2025。万博の“顔”ミャクミャクが人気を博しSNSを中心に話題となる一方で、相次ぐ海外パビリオンの撤退や予算編成の甘さ、帰宅難民の発生など課題も多く浮かび上がりました。なかでも、問題の根源にあったのが「夢洲」という開催地の選定そのものです。なぜ、都市から孤立し、将来性も見込めない“どん詰まり”の人工島が選ばれたのでしょうか。その背景には、万博の理念とはかけ離れた「黒い思惑」があったようで……。森山高至氏の著書『ファスト化する日本建築』(扶桑社)より、その背景に迫る。

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廃棄物処分場の“どん詰まり”につくられた「夢洲」

ふりかえって、東京オリンピック2020、大阪・関西万博2025を考えてみたときに、その目的意識や開催準備の過程、その結果について前回の国際イベントと比較して、本当に同じ国家が開催しているのだろうか、と疑問に思うぐらい残念な方向に進んでいると言わざるを得ない。

 

まず、開催地であるが大阪湾に突出した北港処分地という名の通り、海の中に堤防を築き、都市の廃棄物を処分しながら浚渫土(しゅんせつど)や工事残土と共に人工的に埋め立てられた孤島であった。それが現在の「夢洲」である。

 

この場所選定が後々まで尾を引き、万博の開催準備で大きな足かせとなっただけでなく、2000億円以上の投資を強行した割には、70年万博に見られたような、万博準備に合わせた周辺都市の整備や、万博開催後の跡地利用など、その後の都市の発展に繋がっていくきっかけがなにもないのである。

 

その理由は、既存の都市構造と乖離した立地であるだけでなく、会場周囲は未だ海中であり、将来の人口増加を期待できる住宅地でもなければ、商業地域も存在せず、また夢洲へアプローチする公道も通り抜けの1本があるだけである。つまり、公共交通機関も乗降客の将来像を見通せない都市計画となっているのである。

 

なぜ、そのようなどん詰まりに会場選定がなされたのかと問えば、誰しもがIR誘致のためであったと答えられるぐらいに知れ渡っている。今回の大阪・関西万博の開催理念とは完全にかけ離れた動機なのである。

 

もちろん、そこに「人類」という文字もテーマもない。

 

夢洲選定の背景にある「カジノ誘致」

IRとは統合型リゾートといかにも意味深な名称がつけられているが、簡単に言えばカジノを誘致するための背景となる商業リゾート地のことである。

 

我が国では以前より米国のラスベガスやアジアではマカオ、シンガポールに存在する金銭を賭けて様々なゲームを楽しむ公認の賭博場、いわゆるカジノが存在しない。そのことが世界中の超富裕層が来日しない理由のひとつであり、観光地としても大きなお金を落とす場所がない、ということを理由として、以前よりカジノ誘致の施策が練られていた。

 

しかし、賭博を公然と誘致することに日本国民の反発も大きいことから、日常生活とは離れた隔離された空間として、高級リゾート施設群の中のほんの一角を占めるのみである、という建前で3%ルールというものを設けた。

 

IR法というものが施行され、統合型リゾート施設規模全体の面積の3%の広さしか賭博用途では使用しない、と法規制したわけである。IR全体では77万m2の規模があり、カジノで使用する面積は2.3万m2だという。2.3万m2とは正方形でいえば約150メートル角。軟式野球のグラウンドほどの広さである。

 

もちろん平地で展開するのではなく、ホテル形式で多層階におよぶ建物として準備されるもので、大都市の駅ビルのような規模である。これは必要なカジノ面積をもとにして、3%で割り戻した面積を、全体のIR面積として77万m2を確保したのだろうと予想される。これだけの巨大な面積を確保しつつ既存の都市や日常からかけ離れた場所、という想定が「夢洲」での誘致の発想に至ったわけである。

 

しかしながら、夢洲は元々廃棄物の処分場だっただけでなく、このIR誘致、万博開催決定の時点でも、まだ埋め立て中だったのである。

 

 

森山 高至

建築エコノミスト/一級建築士

 

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※本連載は、森山高至氏の著書『ファスト化する日本建築』(扶桑社)より一部を抜粋・再編集したものです。

ファスト化する日本建築

ファスト化する日本建築

森山 高至

扶桑社

早い工法、安い建材、簡単な計画──  最近の建物、 なにかがおかしい!? ・「木」を貼りたがる公共施設 ・写真映えを優先する建築デザイン ・迫るタワマンの「大規模修繕」問題 ・理念のない大阪・関西万博……etc. …

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