制度・相続・家の名義…“後戻りできない同居”の難しさ
二世帯同居をめぐるトラブルは、金銭面や感情面にとどまりません。
たとえば、住宅取得時に親が土地を提供したり建築費を援助したりした場合、贈与税の対象になることもあります。一定額を超えた援助は「住宅取得等資金の贈与」とみなされ、非課税制度の適用を受けるためには要件や申告が必要です。
また、家の名義を「子ども夫婦にしていた」場合、将来的に離婚・死別・相続時のトラブルを招くこともあります。「老後も安心して暮らせるように」と考えて資産を渡した結果、居住権や生活費に困るケースもあるため、契約書の作成や権利関係の明確化が重要です。
二世帯住宅を巡る課題としては「生活時間のずれ」「プライバシーの確保」「役割分担のあいまいさ」が挙げられ、事前の合意形成とライフスタイルのすり合わせが欠かせません。
現在、美代子さん夫婦は静かな生活を取り戻したものの、「あの頃の気まずさは一生忘れられない」と振り返ります。
「老後のお金はあっても、人間関係の摩擦までは予想していませんでした。家族だからって、うまくいくとは限らないのですね」
経済的な余裕だけでは築けない“家族のかたち”。同居を考えるすべての人にとって、真剣に話し合い、必要な準備を怠らないことの重要性を改めて考えさせられます。
