前回は、資産家や富裕層はどうやって資産を形成しているのかについて取り上げました。今回は、資産防衛に不可欠な「自分のリスクの許容範囲」を知る方法について見ていきます。

リスクの許容範囲は「精神面」の影響も大きい

「資産防衛のトライアングル」では、本業で生み出したキャッシュフローを安定運用していきます。

 

その際に重要なことは、自分が許容できるリスクの範囲でリスクを取ることです。リスクを取らない限りリターンを得ることもできません。大事なことは、自分にとってのリスクの許容範囲を確認しておくことです。

 

リスクの許容範囲は資金力による面が大きいですが、精神的な面もかなり大きく影響してきます。

 

一般的に、若いうちは比較的高めのリスクを取り、年齢ととともにリスクを減らしていくのがいいともいいます。しかし、短期間で大きく下落したときのことを想定してみると、その含み損が起きた場合に冷静でいられるかどうかが、その人の許容リスクだと思います。

目減りして、冷や汗が出るようならそれは「過剰投資」

2016年初頭の株式の下落相場に当てはめてみましょう。1000万円を日経平均に連動するEFT(上場投資信託)に投資していたとします。2カ月で30%資産が目減りしたとき、含み損の額は300万円。それを許容できるかどうか、です。

 

冷や汗が出るようであれば、その投資金額は過剰でしょう。これは人によってかなり違うはずです。

 

5億円の余裕資金があるなかでの1億円の投資であれば、その程度の含み損が気にならない人もいるでしょうし、反対に100万円でも、ほかのことが手につかなくなるような人もいるものです。

 

そういう意味では、一人ひとりの性格や余裕資金によってリスク許容度は千差万別です。そして、資産運用において大事なことは「大きく負けない」ことです。この点、分散投資やポートフォリオ運用といった言葉に惑わされないようにしてください。

 

いろいろな投資商品に分散することは確かにリスクヘッジになりますが、リーマンショックのような金融危機が発生すると、あらゆる資産カテゴリーで流動性の低下と価格の下落が起こります。

投資手法はメリットだけでなく、デメリットも考える

一定額を長期にわたって買い付ける「ドルコスト平均法」などの投資手法についても、メリットだけでなくデメリットもよく考えたほうがいいでしょう。

 

ドルコスト平均法は、投資対象の市場価格が上下しつつ、最終的には高くなっていなければ儲かりません。値下がりしているときにドルコスト平均法で買い増していけば、損失が膨らむだけです。

 

たとえば、金価格が1オンスあたり1900ドルのときから、ドルコスト平均法で金を毎月買ったとします。現時点で1オンスあたり1100ドルになっていたら、損失がどんどん膨らんでいるはずです。それでも毎月、冷静に金を買うことができるでしょうか。

 

将来の上昇を信じてそういった投資行動がとれる人はいいでしょうが、できない人も多いのが現実です。

本連載は、2016年5月25日刊行の書籍『資産防衛の新常識』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産防衛の新常識

資産防衛の新常識

江幡 吉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の増税、マイナンバー制度や出国税の導入など、資産家を取り巻く状況が年々厳しさを増していくなか、銀行や証券会社が販売手数料を目当てに、「資産防衛のサポート」と称して富裕層に群がっている現状…。資産家が金融営…

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