株価下落がメンタルに悪い理由
株価が下落しているとき、気になって仕事が手につかなくなってしまった……、そんな経験をしたことはないでしょうか。
株価が上昇しているときは、このような感情を抱くことはあまりないと思います。しかし、株価が下落しているときには、心理的な影響を大きく受けることは避けられません。
一般的に、同じ金額であったとしても、失うことと得ることでは感情の振れ幅に「2倍程度」の差があるといわれています(これを行動経済学では「プロスペクト理論」と呼びます)。人は失うことを嫌う生き物なのです。
図1をご覧ください。これは、心理学者にしてノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマン氏の著書『ファスト&スロー』で紹介された価値関数のグラフです。縦軸が心理的価値、横軸が金額となっています。
利益が得られると、通常はハッピーになりますので心理的価値がプラスとなります。逆に、損失が出ると嫌な気分になり、心理的価値はマイナスとなります。
損失と利益とを比較した場合に、損失のほうが利益よりも心理的な振れ幅が大きくなり、その振れ幅の差は2倍程度となっています。そして、短期的には損失を抱えることは頻繁に起こりますので、心理的な負荷が大きくなるのは避けられません。
例えば、株価が上昇して10万円の利益(含み益)が発生した際には何とも思わず、株価が下落して10万円の損失(含み損)を抱えた際には少し嫌な思いをする人がいたとします。この人の場合、10万円を失ったときの嫌な気分を打ち消すのに必要な喜びを得るには、20万円の利益が必要になります。
心理的な振れ幅は、10万円の損失と20万円の利益が同程度ということですね。同様に20万円の損失が出た場合は40万円の利益が、40万円の損失が出た場合は80万円の利益が必要になります。
つまり、利益と損失が同じ額であったとしても、利益を得たときの嬉しさと、損失を出したときの嫌な気分は釣り合っておらず、心の会計はマイナスとなっているのです。株価が同じレンジ(値幅)で、上がったり下がったりしていると心理的なマイナスが積み上がっていくことになり、このことが株式投資の継続を難しくさせています。



