貯蓄に回すだけでは資産は徐々に目減りする
ところが、日本では家計金融資産の半分以上を預貯金が占めています。富裕層であっても、日常や仕事の忙しさ、あるいは投資に対する不安などから、資産形成に二の足を踏む人が少なくないのです。
バブル期など、かつて金利が高かった頃ならば、預貯金は立派な資産形成方法の一つでしたが、現在では当時に比べて金利が大幅に下がっており、預貯金によって資産を増やすのは困難です。
例えば、100万円を預金して20年後に引き出せる額は、1970年12月末から1990年12月末に預金していたとしたら、預けた100万円は3倍近い約293万円になります。一方、2004年3月末から2024年3月末にかけて預金した場合は、約101万円にしかなりません。これだけの増額では、昨今の物価高を勘案すると実質的にマイナスといってよいでしょう。
国民の資産形成が進まない状況を鑑み、政府は2023年に「資産運用立国実現プラン」を掲げました。その主な目的は、貯蓄を投資に回して、個人の資産を増やすことにあります。プランの中で打ち出した政策は多岐にわたりますが、注目は「NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充・恒久化」です。
NISAとは、通常であれば課税される投資利益が、一定額までなら非課税になる制度になります。NISAにおける投資先は株式や債券、外貨など、さまざまです。ただし、非課税の対象となる年間投資額は最大360万円(2025年4月時点)で、仮に5%や10%の高利回りを得られたとしても、老後資金の大きな足しにはなりません。
また、元本割れのリスクもあります。日々の変動が大きい投資は、マーケットの動きで一喜一憂しやすく、精神的な負担は無視できません。2025年4月2日には、米国のドナルド・トランプ大統領が関税の引き上げ措置を発表したことで、世界各国で株価が乱高下したという例もあります。
投資家のなかには一夜にして数億、数十億円が消えたと嘆く人も少なくありませんでした。株価だけでなく、こうした関税の引き上げのような世界経済に影響を及ぼす外交政策の影響は、業績好調な企業にも突如として暗雲をもたらします。社会情勢が目まぐるしく変化する時代において、安定した資産形成は至難の業といえます。
SREリアルティ
監修:SREホールディングス 東 毅憲
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