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ツールをツールとして正しく位置づけるデジタル変革の“真髄”
テクノロジー導入のアプローチも大きく変容しました。かつての「計画→予算確保→実行」という直線的なプロセスから、流動的な状況下で課題自体がアジャイルな手法へと移行しています。デザイン思考を取り入れ、ユーザーに共感し、迅速なプロトタイピングとテストの反復を通じて、真に価値ある解決策を導き出す姿勢が重視されるようになりました。
変革に取り組む際に最も警戒すべき落とし穴は、技術導入そのものが目的化してしまうことです。私はこれまでの経験から、多くの組織が最新テクノロジーの導入に夢中になるあまり、本来の目標を見失うケースを数多く目の当たりにしてきました。その本来の目標とは、ビジネス価値の創出や顧客体験の向上といった根本的な課題解決であったはずです。
ある大手小売企業では、競合に遅れまいと5G、IoT、AIなどの先端技術を用いた「スマートストア」構想を打ち出しました。
しかし、テクノロジーの選定と導入に躍起になるあまり、「なぜこの技術が必要なのか」「顧客にどのような新たな価値を提供できるのか」という本質的な問いが置き去りにされていました。結果として多額の投資を行ったにもかかわらず、顧客満足度の向上や売上増加につながらず、プロジェクトは中断を余儀なくされたのです。
対照的に成功した事例では、技術導入の前に必ず「この取り組みが実現すべきビジネス価値は何か」という問いから出発しています。
ある地方銀行では、AIチャットボットの導入を検討する際、単に「AI技術を導入する」という技術起点ではなく、「顧客の問い合わせ待ち時間を削減する」「相談の質を高めて顧客体験を向上させる」という明確な価値創出目標を設定しました。この目標から逆算してテクノロジーの選定と実装を進めた結果、顧客サービスの質が向上し、オペレーションの効率化も実現しています。
デジタル変革の真髄は、テクノロジーを手段として正しく位置づけ、ビジネス価値の創出と顧客体験の向上という本質的な目的に焦点を当て続けることにあります。そして、この「技術の可能性」と「ビジネス価値の創出」という2つの視点のバランスをとりながら変革を推進することこそ、現代のITコンサルタントに求められる最も重要な役割なのです。
技術至上主義に傾けば現実のビジネス課題から乖離し、逆にビジネス視点だけに固執すれば技術の革新的可能性を見逃してしまいます。この両極の間を巧みに往来しながら、最適な道筋を示すことができるのが、真に価値あるITコンサルタントの証しなのです。
大野聖一
North Star Management株式会社
代表取締役
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