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AIテクノロジーの業務適用とその現実
AIはいまや多くの業界で注目されるテクノロジーとなり、その業務適用も加速度的に進んでいます。
生成AIをはじめとする技術の進化は、企業の業務改革や意思決定プロセスに大きな変化をもたらしており、ITコンサルタントの関与範囲もこれに応じて広がりつつあります。AIによってクライアントの課題をどのように解決できるかを探るため、業務分析から導入計画の策定、PoC(Proof of Concept)を通じた効果検証まで、私たちはクライアントと一体となって取り組んでいます。
例えばドキュメント管理においては、AI - OCR 技術が活用されています。従来のOCR技術では読み取り精度に限界があり、最終的には人手による確認と修正が不可欠でした。これに対してAI - OCRは、非定型帳票や手書き文字などの認識精度を大幅に向上させ、文書のデジタル化と確認プロセスの自動化範囲を拡大することが可能です。結果として、業務負担の軽減と効率化が同時に実現されます。
また、カスタマーサポート領域では、AIチャットボットの導入が進んでいます。あらかじめ蓄積されたFAQデータを基に、AIがユーザーの質問に自動応答する仕組みで、これによりサポート体制の省力化と品質向上が期待されています。チャットボットは運用とともに学習を重ね、回答精度が高まっていくのも特徴です。
さらに、ソフトウエア開発の分野でもAIの導入が進んでいます。コード生成においては、AIが過去のソースコードからパターンを学習し、新たなコードの提案やバグ修正を行うことで、開発工数の削減に貢献しています。
テスト工程においても、AIがテストケースの自動生成や結果の分析を担うことで、開発のスピードと精度の向上が図られています。ドキュメント生成の面でも、ソースコードから技術文書を自動的に作成できるようになり、開発プロセス全体の透明性が向上しています。
こうした技術を導入する際には、まず業務の中でどのプロセスにAIが適用可能かを詳細に分析し、必要に応じてPoCを実施します。PoCでは、最小限の機能を持ったプロトタイプを用いて実際の業務に適用し、その効果や課題を検証します。AI導入の目的は、業務時間の短縮や作業精度の向上であり、それが現実の業務にどの程度寄与するかを見極めることが重要です。
とはいえ、AIの導入が常に成功するわけではありません。
例えば、AI - OCRを導入したものの、期待したほどの精度に届かず、結果的に人の確認作業が残るケースもあります。チャットボットも同様に、すべての問い合わせに対応しきれず、ユーザーが最終的に電話窓口を求めるという事態も珍しくありません。技術的には可能でも、実際の業務に適用するとさまざまな制約や摩擦が生じるのが現実です。
こうした場面で重要になるのが、ITコンサルタントの判断力です。プロジェクトが想定どおりに進まないと判断した場合には、現状を客観的に分析し、経営層に対して正確な報告を行うとともに、今後の方針について適切な提案を行う必要があります。追加のリソース投入が妥当か、それとも方向転換が必要かを見極めるのは、単なる技術の知見だけでなく、業務理解と現場感覚を併せ持ったコンサルタントならではの役割です。
AIプロジェクトの成功には、技術的な実現可能性だけでなく、クライアントの業務プロセスや組織文化との整合性も欠かせません。導入後に現場で定着し、実際に価値を生み出すかどうかは、業務の受容性や変革に対する柔軟性に左右されるのです。
AIの本質的な価値を引き出すには、技術とビジネスの両面を理解し、現実的な期待値をクライアントと共有しながら、伴走できるITコンサルタントの存在が欠かせません。技術革新がもたらす可能性を、確かな実行力へとつなげていくためには、現場と経営をつなぐ橋渡し役の力が問われるのです。
