独自性を重視する欧米のファンド
長谷川 日本人投資家と外国人投資家の趣向の違いについて、何か感じていらっしゃることはありますか?
山本 あくまで一般論ですが、機関投資家に関して言えば、日本の人事評価は減点方式と言われます。それ故、日本の機関投資家は保守的で、失敗しないものを選ぶように感じます。大きな組織で、安定感のある運用を好む傾向にあると感じます。もちろんそうでない人もたくさんいて、当社のファンドを採用して頂いている投資家様はそうでない人達に分類されるのだと思います。外国人投資家は、むしろファンドマネージャーの個性や戦略の独自性を重視し、自分が考えないような運用スタイルのものに関心を持っています。
長谷川 日本を拠点とするヘッジファンド・マネージャーが少ないことについて、何か感じ入るところはありますか?
山本 欧米では、ヘッジファンドという存在や、独自性のある運用を手掛けているファンドは非常に多く、ヘッジファンドといえば、そういうものという考え方です。当たり前になっています。そういう点では、もっと多様で独自性のある運用戦略を持ったファンドは日本でも、増えて欲しいと思います。
長谷川 日本での運用にこだわりはありますか?
山本 日本で生まれて日本で学んで、たまたま、入った運用会社が日本だったというだけですね。場所を問わない運用を手掛けているので、日本にこだわっているというわけではありません。日本ものの取引の実行には東京に一日の長はあります。逆に時差のあるところでの取引執行は、面倒な点はありますが。
低金利という逆風を受けているが・・・
長谷川 オルタナ全般に関して、金融リテラシーのあまり高くない投資家はやはり避けるべきなのか、それとも分散の観点から一部でもポートフォリオに組み入れるべきなのか?これはどうお考えになりますか?
山本 理解できないから組み込まないという判断もありますが、自分ではできない運用だからこそ、組み込んで分散するという考えも有用と思います。ひとりで考え、理解するには、限界がありますね。それより、他者を利用して、自分では考えられない対象や手法で運用するからこそ、結果も自分だけの運用とは異なり、分散の意味合いが出るということです。
長谷川 最近ヘッジファンドの運用成績が振るわず、サイズの大きなファンドが閉じたり、手数料の高さが改めて取りざたされたりしていますが、今後のヘッジファンド業界についてどのような見通しを持っていらっしゃいますか?
山本 低金利の環境がヘッジファンドの運用のベースを苦しくしていることは事実です。手数料ひとつとっても、それを打ち返す数パーセントの運用すら難しいという現実は、厳しいですね。ただ、環境は常に変化しますし、悲観的に考えてはいません。
(了)