株式会社GCIアセット・マネジメントで活躍中の日本人ファンド・マネージャー山本 匡氏へのインタビュー。今回は中編です。聞き手は、香港に拠点を置く日系金融機関NWB(Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank)でCOOを勤める長谷川建一氏です。

ポートフォリオ・マネージャーとしての役割

長谷川 山本さんの運用されているファンドを戦略的に分類するとすれば、どれに該当すると思われますか?グローバル・マクロ戦略やCTAなどが、近いのかと思いますが。

 

山本  この分類には、正確な定義があるものではなくて、自己申告制みたいなところがあるのですが、ヘッジファンドのカテゴリ分類の中では、ご指摘の通り、グローバル・マクロか、CTAが近いでしょう。マクロ要因によって収益を上げようとする点で、前者に近いのかなと思います。先物をシステムトレードすることで収益を上げるという点では、CTAの側面もあるのでしょうが。

 

長谷川  ポートフォリオ・マネージャーとしての山本さんの役割を教えてください。

 

山本  一番大事な役割は、ファンドの戦略上の意思決定をしていくことです。そして、顧客に対して、戦略についての説明責任を果たすことだと思っています。

 

長谷川 日々のルーティンとしては、どのようなことをされていますか?

 

山本 モデル開発について考えをめぐらせることもありますが、やはり実証というか、ポートフォリオを構築していくことに時間を使います。そして、データからの計算結果に基づいてトレードをすることもありますし、問題があればオペレーションにも当然、踏み込みます。これまでは、少人数のスタッフで、ファンドの運営・維持に関わる部分まで、全てやってきて大変でしたが、実績も上がり資金の流入も増えてきて、分業できるところも増えてきました。チーム組成やチームでの分業運営という形に重点を移してきていることも確かですね。

 

長谷川 モデル開発というものは、日々変えながらやっていくものなのでしょうか?

 

山本 日々と言うほど、変えるものではないと思います。数ヶ月結果が悪かったからといって、直ぐにモデル変更することが必ずしも正しいとは言えません。

 

長谷川 山本さんの頭の中には、理想とするようなあるモデルがあって、それを目指されていると言うことでしょうか?

 

山本 具体的にポートフォリオを決定するモデルがあるというより、理論背景としては、ドシッとあるということに過ぎません。それを、どうモデルとして具体化していくかというエンジニアリング的な部分では、工夫の余地がたくさんあり、色んなやり方があると思っていますし、そこに判断する面白さがあると思っています。

英EU離脱や米大統領選等、イベントが多かった2016年

長谷川 2014年の戦略立ち上げ時から今に至るまでを比較して、2016年はどのような年だったでしょうか?

 

山本 成果は、まずまずだったように思います。年初、考えていたような成果は十分に出ています。同じようなマクロ・CTAに分類される他社の戦略が軒並み苦しんでいる中では、成果は出ているし、おかげさまで、外部評価も高くなってきています。

 

ファンドの立ち上げ以来、自分の言ってきたことには、確信めいたものがありましたが、その戦略が、今年はしっかりと成果として出てきて、実績として身を結んできていると実感を掴めた年になったと思います。

 

長谷川 今年は、イベント多かったので、大変だったのではないでしょうか?

 

山本 確かに、イベントは多かったですね。一月の中国発の株価の大きな変動に始まり、6月のBrexitは、イベントドリブンとしては、良い機会になりました。11月のトランプ当選はそれほどでもなかったですが。

 

(後編に続く)

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、GCIアセット・マネジメントおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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