ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
長年生活を共にするパートナーの「自分亡きあとの生活」が心配
都内の企業に勤める鈴木貴志さん(55歳・仮名)は、法律上独身ですが、20年近く夫婦同然に暮らす、いわゆる内縁の妻の伊藤春香さん(50歳・仮名)がいます。
また、貴志さんには3歳年下の弟・雅之さん(仮名)がいます。雅之さんは30代で結婚し、妻と2人の子どもと都内のマンションで暮らしています。
貴志さんと雅之さんは子ども時代から仲がよく、15年前に両親を相次いで亡くしたときも、相続で揉めることはなく、貴志さんは横浜市内にある約4,000万円の実家の戸建て住宅を、雅之さんはそれとほぼ同額の預貯金を相続し、現在に至っています。また、春香さんと雅之さん家族の関係も良好です。
「春香とは、正式な婚姻について話し合ったこともあります。でも、春香は大学の研究者で、改姓すると働きにくいというのです。結局、法律婚は選択しないことになりました」
春香さんの考えに同意した貴志さんでしたが、50代後半に差し掛かり、自分亡きあとを考えるようになりました。
「春香はまぎれもなく私の妻であり、人生を共に歩んできた大切なパートナーです。そんな彼女が、私が亡くなったことで、住み慣れた家から追い出されるような事態は避けたいのです」
貴志さんは率直な気持ちを打ち明けつつ、将来への不安の解消を望んでいます。
事実婚と法律婚の決定的な違いは「相続権の有無」
内縁関係とは、法律上の婚姻手続きはしていないものの、実態的には法律上の夫婦と変わらない結婚生活を送っている関係のことで、「事実婚」とほぼ同意です。
内閣府が令和3年に実施した「各種意識調査」によると、事実婚を選択している人は、成年人口の2~3%と推察されています(内閣府男女共同参画局『男女共同参画白書 令和4年版』- コラム3 事実婚の実態について)。
いわゆる「内縁の妻」は、婚姻届の提出・受理がされていないため、一般的には「法律婚の妻」とは認められません。しかし、お互いに婚姻の意思があったり、夫婦同然の共同生活があったりなどで法的に内縁関係が認められる場合には、「婚姻に準ずる関係」として判例(最高裁昭和33年4月11日判決)でも認められているほか、内縁関係にある夫婦にも、次のような請求権が認められます。
●内縁関係にある相手方が不貞行為をした場合の慰謝料請求
●正当な理由がない一方的な内縁関係の解消があった場合の慰謝料請求
●内縁関係を解消する場合の財産分与請求
ただし、相続においては、法律婚と決定的な違いがあります。事実婚に「配偶者の相続権がない」という点です。
法律婚の場合、配偶者は常に相続人となりますが、内縁の妻には法定相続権は認められていません。ただし、「相続人がすべて死亡している」「相続人全員が相続放棄している」などの相続人がいない場合は、内縁関係にある者が「特別縁故者(民958条の3)」に該当し、遺産の一部または全部を受け取れる可能性はあります。
特別縁故者制度とは、相続人がいない場合に、家庭裁判所が被相続人と特定の関係があった者に対して、相続財産の一部を分与するという制度です。
本来、被相続人の財産を相続する相続人がいない場合は法人格が付与され、相続債務等の清算のうえで残った相続財産は国庫へ帰属するのが民法の原則です。しかし、事情によっては、相続権はないものの、被相続人と深い縁故があった人に遺産を取得させることが公平であるとの考えから、民法は特別縁故者制度を設け、相続人でない特別縁故者が遺産を取得する余地を残しています。
しかし、特別縁故者が分与の申立てを行えるようになるまでには、相続財産清算人の選任、相続債権者・受遺者の確認、相続人の捜索などが必要となり、相続人捜索のための公告期間だけでも最低6カ月を要します。また、申立てをしても確実に認められるとは限りません。
したがって、被相続人が内縁配偶者に遺産を遺したいのであれば、何らかの生前対策が必要です。
「財産を春香さんに遺贈する」旨の遺言書を作成
現状において、春香さんは貴志さんが相続した戸建て住宅で一緒に暮らしています。貴志さんが自分亡きあとに春香さんへ自宅を遺したい場合は、「入籍する」あるいは「遺言書を作成する」という2つの選択肢があります。
入籍して正式な夫婦となれば、すぐさま心配が解消するように思えますが、今回の場合はそうではありません。なぜなら、弟・雅之さんに相続権の一部が残るからです。
春香さんと雅之さん家族は、現段階では良好な関係性ですが、先のことはわかりません。今後、雅之さんが経済的に困窮し、貴志さんの遺産の相続権を主張し始めるかもしれませんし、雅之さんは貴志さんの遺産に関心を持たなくても、雅之さんの配偶者が口を出すかもしれません。
また、運悪く雅之さんが貴志さんより先に亡くなれば、代襲相続で雅之さんの子どもたちが相続人になりますし、子どもたちが未成年者なら、法定代理人である親(雅之さんの妻)が遺産分割協議に参加することになります。
しかし、貴志さんと春香さんは当初から法律婚を望んでいないわけですから、そもそも入籍をするという選択は意に沿うものではありません。
そうなると、必然的に「遺言書の準備」が選択肢となります。具体的には、相続人以外の人に遺産を「遺贈」、つまり、遺言によって特定の人に遺産を譲る内容の遺言書を作成します。ちなみに、相続人以外へ遺贈する類似のケースとしては、同性婚パートナーのほか、お世話になった友人・知人、ボランティア団体などを指定することもあります。
相続人がきょうだいのみなら遺留分の考慮が不要なため、「すべての財産を春香さんに遺贈する」という内容でも差し支えありません。
さらに、同遺言で「遺言執行者」を指定しておくと、遺言執行者が遺贈義務者として、遺言内容を実現してくれることになります。遺言執行者には、未成年者や破産者以外なら誰でもなれます。相続人である雅之さんもなれますが、前述の理由からも、客観的な立場の信頼できる第三者を指定するほうがよいでしょう。いない場合は、専門家(税理士や行政書士など)に依頼することもできます。
平田 康人
行政書士平田総合法務事務所/不動産法務総研 代表
宅地建物取引士
国土交通大臣認定 公認不動産コンサルティングマスター
税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
富裕層だけが知っている資産防衛術のトレンドをお届け!
>>カメハメハ倶楽部<<
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
注目のセミナー情報
【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション
【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?
