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金商法適用の理論的根拠と実践的限界
1.トークンの本質的分類と規制適用の論理
暗号資産を金融商品取引法の対象とする検討において最も重要な論点は、「いかなる暗号資産が金融商品に該当するのか」という本質的分類の問題です。従来のICO(Initial Coin Offering)の大多数は、実質的には暗号資産という装いを纏った資金調達活動でした。
健全なプロジェクトにおいては、発行体の事業収益がトークンの経済的価値の源泉となっており、これは本質的に株式投資と同一の構造を有しています。投資家は企業の将来的成長に期待して資金を提供し、その成功に応じた経済的利益を享受するのです。逆に、明確な価値創出メカニズムを欠くプロジェクトの多くは、詐欺的要素を含むスキャムトークンである可能性が高いのが現実です。
今回の制度改正は、こうした市場の実態を法的に整理し、投資家の合理的期待に基づく適切な保護体制を構築する試みとして理解されるべきでしょう。これは「技術革新」や「分散化」という美名のもとに規制回避を図ってきた現状を是正し、ようやく正常な金融商品としての地位を確立することを意味します。
2.ステーブルコインとの合理的棲み分け
決済機能に特化したステーブルコインの取り扱いは、今回の制度設計における重要な検討事項です。法定通貨連動型ステーブルコインは、その経済的実質において投資対象というよりも決済手段としての機能が中核となります。
これらは発行体の経営成績とは独立して、裏付け資産との等価交換を保証する仕組みであり、株式とは本質的に異なる性質を有しています。金融庁のディスカッション・ペーパーでは、こうしたステーブルコインについては既存の資金決済法体系を維持し、投資性の高い暗号資産のみを金商法の対象とする方向性が示唆されており、これは経済的実質に着目した合理的な分類といえます。
