名前を変えた元悪徳施設に入居してしまう利用者も
先の大阪市の介護事業所経営者が続ける。
「例えば、処分を受けた代表者が、配偶者や友人を新たな代表者に据え、表向きには全く別の法人として事業を開始するケースをよく聞きます。表向きは、問題を起こした人物が経営に関わっていないということになっていますが、実質的な経営者は同じ。このような手法は、行政の監視の目をすり抜け、再び事業を始める手段としてよく使われている手口です」
実際に私が過去に取材した問題のある事業所は、もともと株式会社だったが新たにNPO法人を立ち上げ、代表者を問題があった社長の知人にしている。表向きは全くの別法人であるが、実質的経営者は同じだった。ちなみに、この問題があった会社社長は、従業員に「会社にもしものことがあったら、別法人をつくるしかないな」という趣旨の話をしており、その音声データも私の手元に残っている。
こうした手口を行政も知らないはずはない。
前出の経営者が言う。
「もちろん市も知っています。ただ、書類の上では全くの別法人になっていることもあり、どうすることもできないと市の担当者が言っていました」
そうした情報を知らされることもなく、名前を変えた元悪徳施設に入居してくる利用者もいるのだ。
甚野 博則
ノンフィクションライター
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