介護の負担を軽減するために、親を「介護施設」へ入居させることを考える人も少なくない。利用者に対して適切なサービスが提供されているのであれば安心だが、利用者への「虐待」が日常茶飯事になっているという恐ろしい施設もあるという。本稿では甚野博則氏による著書『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』(宝島社)から一部抜粋・再編集し、悪徳施設を根絶できない原因について見ていく。
長年にわたり虐待が放置され続けている
九州地方のある施設で、長年にわたって虐待が続いていると明かすのは、この施設で働く林田雅之さん(仮名)だ。
この施設では、平日の午前中に1時間だけ介護が行われるものの、それ以外の時間はほとんど何の支援も行われていないという。例えば、入浴時間中も手が空いている職員が利用者に積極的に関わることはほとんどなく、建物は施錠され、利用者は外に出ることができない状況だと林田さんは語った。
さらに、この施設ではこんな状況が日常的にあったと林田さんは明かす。
「浴槽から利用者さんを出す際に、声かけに応じないと髪を引っ張って移動させる場面や、シャワーで冷水を浴びせる職員がいたこともありました」
また、朝起きてこない利用者に対して大声で叱責する場面も見たことがあると打ち明けた。施設内部では尿臭が漂う居室が放置されたままだといい、利用者が1~2センチも大きい靴を履いていても放置していたという。転倒の危険があっても知らん顔をしていたのだ。
林田さんは2020年に、他の事業所からこの施設に移動してきたが、当時から虐待が日常化していたという。
「施設内で行われている虐待は誰も止めようとせず、上層部に報告しても取りあってもらえなかった」
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ノンフィクションライター
1973年生まれ。ノンフィクションライター。大学卒業後、大手電機メーカーや出版社などを経て2006年から『週刊文春』記者に。
「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」などの記事で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」のスクープ賞を2度受賞。現在はフリーランスのノンフィクションライターとして、週刊誌や月刊誌を中心に社会ニュースやルポルタージュなどの記事を執筆。近著に『実録ルポ 介護の裏』(文藝春秋)、『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)がある。
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連載『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』