病気で働けず、収入0円。医療費「40万円」自己負担…治療費が払えない層が生まれる<高額療養費制度改正案>の問題点【現役訪問診療医が解説】

病気で働けず、収入0円。医療費「40万円」自己負担…治療費が払えない層が生まれる<高額療養費制度改正案>の問題点【現役訪問診療医が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

2025年3月、自己負担額の見直し案が挙がったことで話題となった高額医療費制度。医療費負担の大きい世帯にとって心強い制度ではありますが、矛盾点もまた見受けられます。医療法人あい友会理事長の野末睦医師が経営者の視点から詳しく解説します。

制度改定で子育て・現役世代の負担はさらに増える

これは持論ですが、私のように、現役引退、というほどではないけれど、子育てに関しては手が離れた世代であれば、ある程度資産も貯まってきているという想定が立ちます。まだ負担が多くてもなんとかなるのですが、この制度改定で負担が重くなるのは、子育て世代、現役世代の人々です。

 

子育て世代、現役世代の人が、もしも病気になってしまい、その前年の収入が1,000万円を超えていたばかりに、毎月約30~40万円まで自己負担しろ、といわれてしまうと、治療を受けるにも躊躇してしまうのではないかと思います。金銭的負担を理由に治療を諦める、ということがあってはなりません。

 

こうしたことを鑑みると、国は、現役世代に対して少し配慮すべきだろうと思います。私自身が40~50代の頃を思い返してみても、当時は子育てにお金がかかり、貯金はほぼ無いような状況でした。

 

もし、そういった状況で病気になってしまい、高い保険料を払っていたにもかかわらず、高額療養費の限度額が数十万だったら「それは払えないだろう」と思ってしまいます。現役世代や子育て世代、つまり30代後半~50代半ばぐらいまでの世代の人たちにとって、今回の高額療養費制度改定は本当に厳しいものだと思います。

 

また、高額療養費制度以外で現役世代に厳しく、在宅医療にもかかわる制度として、介護保険が挙げられます。介護保険は、40歳以上65歳未満の人の場合、末期がんなど16種類の特定疾病の場合は適用となりますが、それ以外の病気にかかった場合は適用されません。40歳未満の人はそもそも対象外です。

 

これは、介護保険制度が「加齢に伴う病気や状態」を対象としているためです。40~65歳未満の方の場合、加齢以外の病気による介護ニーズは、医療保険制度や他の福祉制度で対応することを想定しています。 こういったことからも、30代後半~65歳までの世代への保障が足りていないな、というのが、現行の社会保障制度に対して私の感じているところです。

 

在宅医療を提供するということは、社会の仕組みも理解しながら行う必要があるため、このような制度にも十分精通している必要があります。

 

(参考:介護保険制度の概要|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html)

 

野末 睦
医師

医療法人 あい友会  理事長

 

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