今回は、ミャンマー人のスケジュール感覚を見ていきます。本連載では、日本ミャンマー支援機構で約300社の海外進出のサポートを行ってきた日本人アドバイザー・深山沙衣子氏の著書、『ミャンマーに学ぶ海外ビジネス40のルール』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、ミャンマー人の国民性や彼らのビジネス慣習などを紹介します。

観光の予定を立てずに来日!?

昨今、日本は外国人観光客の呼び込みで景気底上げを図ろうとしています。外国人観光客の爆買いがクローズアップされていますが、こうした観光立国に向けた企画がたくさんあるのです。外国人向け観光ビジネスを、旅行会社などは「インバウンド」と呼び、日本のよいところを発掘して、観光を楽しんでもらおうと様々なキャンペーンを行っています。

 

日本の外国人に対する政策は、「短期間で来てくれて、お金を落としてくれるなら大歓迎。ただし、高度な技術がないのにそのまま居座られるのは歓迎しない」というもの。そのため、ものを買い、飲み食いなどでお金を落としてくれる「外国人観光客」の増加は国にとっても関連企業にとってもおいしいのです。

 

ところがこのインバウンドビジネス、外国人観光客の対応をするときは、日本人観光客の対応ほどスムーズにいきません。行き当たりばったりの対応を求められることがあるのです。

 

ミャンマー人の観光客に限って言えば、富裕層のミャンマー人観光客の多くがノープランで来日します。日本に来てから、「明日は東京観光の予定だけど、じつは箱根に行きたい」「旅程に入っていないけど、今から辛い料理を食べに行きたい。いいレストランを探して」などなど、直前になってからスケジュール変更の依頼をしてきます。旅行会社が綿密に立てたスケジュールをその都度組み直すという事態になりかねないのです。

 

ミャンマー人がスケジュール変更を言い出しても、彼らの頭の中には受入先の大変な迷惑やキャンセル料の発生という発想が浮かばないのです。ミャンマーでは、プランを立てて計画的に行動する習慣があまりないので、日本に来ても同じふるまいをします。なぜ、長期プランを立てないのかと言うと、ミャンマーでは政治体制やビジネス環境が翌日には急変することがあり、長期プランに沿って生きるより、その場の対応を重視したほうがうまくいく場面が多々あるからです。

 

この「ノープラン行動」に、計画好きな日本人がついていくのは至難の業です。なかには、こうした外国人観光客の習性を熟知しているのか、「お客様の詳しい好みがわからないから、来日してから旅程を立てよう。来日する日と、おおまかな訪問都市だけは決めておこう」と、ざっくりとしたスケジュールで外国人観光客を迎える旅行会社もあります。その場合、お客様の出身国のガイドを日本で雇って、そのガイドに観光や来日時の世話の全権を委ねています。

 

ところが、ガイドが成田空港で待っていても、お客様が乗ってくるはずの飛行機で来ないことがあります。「もっと早い飛行機便に乗れたから、別便に乗ってきちゃった」と悪びれることなく言うのです。日本の旅行会社にしてみれば、「ねえ、ウソでしょ!? ちゃんとお客様本人かパスポートを確認して!」とガイドに確認を指示します。確認すると、もちろん予約しているお客様なのです。

 

お客様ひとりならそれでもフォローできるのですが、「一緒に来日するはずのほかの仲間は、明後日に来ることになりました」などと付け加えられると、日本の受入担当者は初日からぐったりします。別便で来ることを事前に言わないし、勝手にスケジュールを変える。日本人からすると、その後の計画を立て直すことに必死で、頭が痛くなります。

 

ここで提案します。最悪のケースでは、いきなり来日をキャンセルすることもあり得ます。スケジュールを直前になって変更をする可能性があるお客様に対しては、計画を立てるという概念を捨てたほうがよいのです。

喜ばれるのは入念な事前準備より、臨機応変な対応

日本人は親切心で、外国人観光客向けの旅程を詳細に立てますが、外国人観光客が気の向くまま観光したいと望めば、どんなにすばらしい旅程を用意していたとしても、気ままな観光こそがベストな観光プランです。逆に、海外からみた日本は、旅行に限らずビジネスや日常生活でも、事前準備しすぎる傾向があると思われています。

 

東日本大震災発生時、津波の被害を伝える英語ニュースでこう評されているのを聞きました。「ハイパープリペアードカントリー(準備しすぎる国)がこのような津波の被害に見舞われています」と。

 

外国人相手のビジネスは、外国人の出身国やその人の性格にもよりますが、行き当たりばったりのシーンが増えます。そのときは、「その場で臨機応変に対応すればいい」という概念を持ってインバウンドビジネスに当たると、直前キャンセルに遭遇したときのストレスも少し減るのではないでしょうか。

 

「もっと計画を立てて臨めば、いい結果が残せるのに」と思うかもしれませんが、計画を立てても無駄になることが多い環境にいると、40パーセントから60パーセントの準備をして、当日の対応で全体を85パーセントから95パーセントくらいにまとめれば、サービス提供側も受け手もハッピーだと思うようになります。すると、おのずと仕事への心構えが違ってきます。

 

本来ならば、100パーセントの準備をして、完璧なパフォーマンスを提供してこそ日本の『おもてなし』精神でしょう。しかし、育ってきた環境が圧倒的に違うお客様の望むものを、初めから100パーセント理解するのは不可能です。大事なことは、「目の前にいる人をハッピーにしてあげたい」と心から思い、準備に時間を費やすよりも、目の前にいるお客様のサポートを重視することです。

本連載は、2016年4月30日刊行の書籍『ミャンマーに学ぶ海外ビジネス40のルール』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ミャンマーに学ぶ海外ビジネス 40のルール

ミャンマーに学ぶ海外ビジネス 40のルール

深山 沙衣子

合同フォレスト

双方の歩み寄りが未来を開く! 異文化地域とのビジネスは言葉以上のカルチャーショックだらけ。 この一冊に相互理解のヒント満載。 ミャンマーを中心に約300社の海外進出のサポートを行ってきた著者が明かす、円満海外ビジネス…

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