(写真はイメージです/PIXTA)

2025年5月16日、フジメディア・ホールディングスの取締役会は、定時株主総会に提出する取締役候補者案を決定しました。これにより、大株主であるダルトンは委任状争奪戦を開始する意向を示しています。本稿では、ニッセイ基礎研究所の松澤登氏が、委任状争奪戦について詳しく解説します。

委任状争奪戦とは

2025年5月16日、フジメディア・ホールディングス(FMH)の取締役会は、定時株主総会に提出する取締役候補者案を決定した。これは先に大株主(ダルトン)から提案のあった取締役候補者案と異なるものであったことから、ダルトンは委任状争奪戦を開始する意向を示している1
1 2025年5月25日日経新聞朝刊7面参照。

 

委任状争奪戦とは、会社以外の株主が提出した議案(本件では取締役候補選任議案)と会社が提出した議案が異なる場合に、株主が自己の提出した議案に賛成する委任状(proxy)を出すよう他の株主に働きかけることを言う2。一方で、会社は自社提案に賛同するよう株主に委任状の提出を要請するため、委任状争奪戦(プロキシーファイト)と呼ばれる。
2 江頭憲治郎「会社法(第8版)」p355参照。委任状合戦ともいう。

 

株式会社における取締役の選任は、合計して議決権の過半数を有する株主が出席したうえで、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行われる(会社法309条1項)。この出席株主には、(1)株主が直接株主総会に出席する場合に加え、(2)議決権を代理行使する(=委任状による)場合(会社法310条1項)、(3)書面により議決権行使する(=議決権行使書による)場合(会社法311条1項・2項)を含む。委任状争奪戦とは、この二番目にある委任状について、提案株主が提出した議案の可決される水準(≒全議決権の過半数)になるまで獲得できるかどうかを争うものである3
3 三番目の議決権行使書において提案議案に賛同するよう働きかける行為に後述の金商法の適用があるかどうかは説が分かれている(江頭憲治郎「会社法(第8版)」p357参照。

 

取締役選任議案が株主総会に付議されるとき、株主は単独で議案、すなわち取締役候補選任議案を提出することができる(会社法304条)。また、会社からの株主総会開催通知に株主提案が議案として記載されるためには、株主総会の8週間前までに会社に請求する必要がある(会社法305条1項)4
4 この請求を行うには、株主が総株主の議決権の100分の1以上または300個以上を6か月以上保有している必要がある。

 

この請求がなされた場合において、典型的には、会社が送付する議案書には第一号議案として会社提案の取締役候補選任議案が、第二号議案として株主提案の取締役候補選任議案が記載される。会社の送付する議決権行使書や委任状において、会社は第二号議案に反対である旨が記載されている。また、記入欄が空白で署名のみが記載された委任状又は議決権行使書が会社に返送された場合には、第一号議案賛成、第二号議案反対の取扱いとする旨が記載されている5
5 神作裕之「議決権行使書面と会社の勧誘する委任状の取扱い」ジュリスト1553号p103参照。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年05月29日に公開したレポートを転載したものです。

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