手がけた事業は500超え、実は失敗も多い「渋沢栄一」だが…彼が断言していた「成功する経営者」の共通点

手がけた事業は500超え、実は失敗も多い「渋沢栄一」だが…彼が断言していた「成功する経営者」の共通点
(※写真はイメージです/PIXTA)

新1万円札の顔として、その名を知らぬ者はいないでしょう。近代日本経済の礎を築いた稀代の実業家、渋沢栄一。彼は単なる経済人ではありませんでした。混迷の時代を生き抜き、500もの企業の設立・育成に携わったその生涯は、私たちに多くの示唆を与えてくれます。本稿では、折原浩氏の著書『理想の経営 渋沢栄一に学ぶ成功への10カ条』(有隣堂)より、渋沢栄一の経営学を紐解いていきます。

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信号が全部青になるまで待つな

そも人生の運というものは、十中の一、二、あるいは予定があるかもしれぬ。しかしながらたとえこれが予定なりと見た所が、自ら努力して運なるものを開拓せねば、決してこれを把持することは不可能である。

(『論語と算盤』) 

 

そもそも人生における運というものは、十中の一か二は決まっているかもしれない。しかしそれが定めと決めつけず、努力して運命を切り拓かなければ、決してこれを打ち破ることはできない。

 

成功する経営者における共通点は、実行力があることだ。経営者は実際に行動し、成果を出してこそ評価される。

 

事業の成功を見て、あれは俺が思いついたものだとか、あんなことは誰でも思いつく、という人もいるが、実際に実行してはいない。本当に思いついたかは別としても、決断し、行動したからこそ、その起業家はそこまで賞賛されるのだ。

 

「信号が全部青になるまで待つな」という格言がある。先の信号が赤であったとしても、目の前の信号が青であれば進み始め、進みながら先の信号が変わるのを待てばよい、という意味だ。経営であれば、進んでいる間に先の信号を青にする努力もできる。それに、水面に石を投げ入れれば波紋が起こるように、行動することで、局面が変わり、道は拓けるかもしれない。

 

経営は、行動することで結果を出すことを志向する。結果を恐れて待つのではなく、まずは動いてみるのだ。そして、刻一刻と変化する経営環境を見極め、時を味方に臨機応変に挑むことが肝心なのだ。

 

人生のうち、10%か20%は、もしかしたら、すでに決まっているのかもしれない。でも、自ら努力してこれを打ち破ろうとしなければ、決して道は拓かれない。

 

渋沢栄一はこう考えた

渋沢が起業を手がけた事業は500にも及ぶ。もちろん渋沢は、道徳経済合一説のチェックや、数値的な見込み、経営者の意気込みなどを見て慎重に判断していたのだが、自分が行う事業については、素早く行動した。そのため思わぬ失敗も数多くあった。

 

明治34(1901)年、還暦を過ぎた渋沢は東京の飛鳥山に住居を移す。だが、飛鳥山のすぐ近くの王子停車場には、渋沢たちが作った製紙会社があった。後の王子製紙だが、思わぬ生産拡大により工場には巨大な煙突が立ち並ぶようになっていった。

 

また、その近くにあった停車場からは、製紙工場で作り出される製品を運ぶ蒸気機関車が頻繁に走り、黒い煙をもくもくと出して、飛鳥山まで流れていった。庭園の木々は枯れ、家にも煤が入った。しかし渋沢は、「わしが骨を折って立てた会社なのだから文句などいえまい」と終始笑っていたという。

 

事業を起こすときは、すべてが予想通りになるとか、あらゆる事態を想定しつくすことなど無理だ。さまざまなマイナスの副産物を生むこともあるだろう。しかし「安全」が確信できるまで待とうとすれば、結局始めることはできない。

 

 

折原浩
全国商工会連合会
認定経営支援マネージャー事業委員長

 

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※本連載は、折原 浩氏の著書『理想の経営 渋沢栄一に学ぶ成功への10カ条』(有隣堂)より一部を抜粋・再編集したものです。

理想の経営 渋沢栄一に学ぶ成功への10カ条

理想の経営 渋沢栄一に学ぶ成功への10カ条

折原 浩

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