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「昔から乗っていたベンツ」はどのように評価される?
上述のような評価方法があるなか、交通事故に関する裁判例ではありますが、事例の「昔から乗っていたベンツ」は以下のように、インターネットや中古車販売等の実際の流通価格を参考にしていることが多いといえるでしょう。
参考裁判例(交通事故について)
●大阪地判平成26.1.28
(平成11年4月登録のメルセデスベンツ・S500Lについて)
インターネットサイトで同種同型車を検索した平均価格、平成12年式に限定した平均価格をもとに時価を算定した。
→インターネットサイトの価格が用いられた
●東京地判平成30.12.20
(平成8年式のポルシェ・911ターボについて)
パーツ生産中止で修理が不可能か非常に高価になってしまい、レッドブックの中古車小売価格は実際の取引における価格水準を適切に反映していない。日本及び米国の中古車市場における同車種・同年式の車両の価格水準、走行距離から時価を算定した。
→中古車市場の価格が用いられた
●名古屋地判平成8.9.18
(車歴16年で同型、同色、同年式のものはほかに日本に輸入されていないベンツについて)
車両の色よりも、むしろ塗装状態が価格に影響するものであるから、車両が特殊な色であることを理由として骨董的、美術的価値を認めることはできない。仮に一部のコレクターの間で珍重されることがあっても一般人には予測できないから、そのような事情に基づき評価された損害は相当因果関係を欠くとして中古車市場における同種、同一年式のものから時価を算定した。
→中古車市場の価格が用いられた
法的な解決手段
まず、大きくわけて自動車を売却するか、そのままの形で利用し続けるかがあります。自動車を売却することは、遺産を現金化してその金銭を相続する「換価分割」にあたります。この場合、適切な価格で現金化できるよう、ディーラーや買取業者に売却をしてもらうのがよいです。
ただ、今回は息子がベンツをそのまま乗り続けたいといっています。息子の希望を叶えるならば、息子がベンツを現物で取得し、ほかの親族は代償金を受け取る「代償分割」の方法をとりたいものです。
この場合でも、残りの相続人は、本来自分がもらえるだけの金額をもらえるのであればひとまず満足となるでしょう。しかし、そのときには持分に応じた金銭的価値が遺産分割としてきちんと与えられているかが相続人の大きな関心ごととなり、その基礎となる自動車の評価が重要となってきます。
単純に相続財産が現金などであればわけやすいです。しかし自動車や実家などの不動産といった、相続財産に評価が含まれる場合には共通していえることですが、
・当該財産をもらう側はその価値を低めに出してもらい、ほかの相続人に分割する金額をできるだけ少なくしたい。
・当該財産をもらえない側は価値を高めに出してもらい、分割でもらえる金額を高くしたい。
このように、評価金額でもめるケースが多いです。今回の事例でも、まずは相続人間で納得できる評価方法を決めることになります。もしここで納得が得られなければ、最終的には上述の裁判例と同じようにインターネット上の価格や中古車販売価格を参考にすることで全員に公平な遺産分割が実現できるといえます。