米中の関税合戦は景気下押しリスク
トランプ米政権による不公正貿易の是正を目指した関税発動により、国際的な相互関税の脅威から貿易戦争リスクが意識され、景況感の悪化につながっている。
特に米中の通商政策は、人工知能(AI)・半導体や電気自動車(EV)などの最先端技術で主導権を握る企業を巻き込んだ政治的な対立に発展するリスクが警戒されている。
「米政権から中国は敵国視されている。米国は、中国が台頭してリーダーシップをとることを制限し、中国とロシアを引き離したいとの意図がある。中国が米国の最新テクノロジーに接することを避けたいとの意図もある」(RBCブルーベイ・アセット・マネジメントのダウディング氏)という。
中国のスタートアップDeepSeekが高性能AIモデル開発に成功したことを受け、米国の半導体関連の株価は乱高下した。
ベストセラー「ブラック・スワン」の著者ナシーム・ニコラス・タレブ氏は、1月の米AI向け半導体大手エヌビディア株の急落について、「AI主導の株価上昇に盲目的に飛び乗った投資家がこれから直面する事態の「ほんの序章に過ぎない」と警告した。
また、EVを巡る米中の戦いも続いている。2024年に中国EVメーカーBYDのバッテリーEV年間販売台数は176万台に達し、米テスラの179万台に肉薄している。同年の売上高はBYDが7,770億元(1,070億ドル)とテスラの977億ドルを上回った。
AI・半導体・EVなどハイテク分野での優位性を巡る米中の争いは、保護主義を助長させ、2025年の世界経済の見通しにも暗雲を漂わせている。
恐怖指数といわれるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数(VIX)は4月7日に一時60.13まで上昇し、2024年8月5日以来の高水準を記録。リスク資産が売りを浴び、質への逃避の動きとなった。


