いずれ同居するつもりだったが…60代父の死で起きた「想定外」
高齢になった親のことは心配だが、自分の家庭の切り盛りで精一杯――。働き盛りの世代では、このようなジレンマに悩む人も多いのではないでしょうか。
頭を抱えるのは、都内の中堅企業に勤務する佐藤隆さん(仮名・37歳)。一昨年父を亡くして以降、母、昌子さん(仮名・65歳)のことで悩んでいます。
隆さんの父親の博さん(仮名・享年68歳)は、母親をパートにも出さず、専業主婦として家庭のなかで守ってきました。「優しくて頼りがいのあるご主人に、上品でおしとやかな奥様」というのが、隆さんの両親の周囲からの評判でした。
「健康に気を使っていたあの父が、まさか60代で急死するとは…」
父親の全財産は、老後生活の安定のために母親が相続しました。相続財産は、これまで暮らしてきた都内の分譲マンションのほか、父親が残した預貯金、生命保険です。遺族年金約15万円の受給もあり、なんとか生活のめどが立ちました。
「いずれは両親と同居する覚悟でしたが、想定よりずいぶんタイミングが早くて。そのため、当分は母ひとりで暮らしてもらおうと思っていたのです」
そんな折、佐藤家に大変明るいニュースがもたらされました。なかなか子どもを授からなかった隆さん夫婦が、第一子を授かったのです。父親の葬儀から半年後のことでした。
隆さんの妻の実花さん(仮名)は3歳年上です。2人は結婚が遅かったこともあり、子を持たない人生設計を描きはじめたときの、うれしい誤算でした。
「親孝行ができてよかったねと、夫婦で話していたのですが…」
【親と同居するメリット・上位5】
1位「金銭面で楽になる」…49.4%
2位「家事が分担できる」…26.8%
3位「親の見守り・世話ができる」…19.4%
4位「育児を助けてもらえる」…14.2%
5位「安心感がある」…7.0%
出所:株式会社AlbaLink『親との同居に関する意識調査』
「きっとお父さんの生まれ変わりよ!」お嫁さんはドン引き
ところが、隆さんの母親が「孫フィーバー」を発動。父親を亡くした悲しみを振り切るように、まだ見ぬ孫のためにあれこれ準備をはじめ、実花さんに妊娠中の経過報告を求めるなど勢いが止まりません。最初は苦笑いしながらあしらっていた実花さんも、
「きっとこの子は、お父さんの生まれ変わりよ!」
との発言が出たことで、ドン引きです。そして、実花さんがいちばん心配していた局面が訪れました。
「共働き、大変でしょう? 同居して、私がこの子を育ててあげます」
「お母さん、それは…」
隆さんは、とっさに母親の言葉を遮りました。