(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、シニアマーケットストラテジスト・久髙一也氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

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【目次】

1.「トランプ2.0」が翻弄する金融市場、先行きの不透明感はいつ晴れる?

2.売買タイミングを狙いすぎることで、相場上昇の機会を逃すリスク

3.先行きが不透明なときにこそ再評価したい、『積立投資』の有効性

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2025年1月20日、米国の第二次トランプ政権、いわゆる「トランプ2.0」が始動しました。トランプ大統領は、①保護主義的な政策(関税引き上げ、不法移民制限)、②税制改革(法人減税など)、③規制緩和(環境エネルギー、金融、AI分野など)の3つのアプローチを通じて、米国第一主義の実現に取り組む姿勢を示しています。

 

2月に入ると、大統領就任初日には見送られた追加関税措置の実施計画が次々と公表され、その後も折に触れて世界の金融市場を翻弄しています。現時点では関税の対象地域や品目が限定され、すべての輸入品への一律関税の導入に至らなければ、景気やインフレへの影響は限られるとみますが、当面は先行きの不透明感が残りそうです。

 

先行きが不透明な局面では、資産形成において分散投資の重要性がより高まると考えられます。分散投資の方法としては、投資対象(株式、債券など)、地域(国内、海外など)を複数に分けることでリスクの偏りを避ける方法が挙げられますが、ここでは時間(投資タイミング)分散にあたる『積立投資』の有効性に着目していきます。

1:「トランプ2.0」が翻弄する金融市場、先行きの不透明感はいつ晴れる?

■米国では、大統領と上下院の過半数議席を共和党が占める「トリプルレッド」が実現し、「トランプ2.0」の政策実行力は高まったとみられます。足元では保護主義的な政策に対する懸念が先行きの不透明感を高めていますが、中長期的にみれば、税制改革や規制緩和を通じて、米国を中心に景気や株式市場を支えると想定されます。

 

■日米の株式市場は、投資家の不安心理を示す「恐怖指数」(オプション価格の値動きを基に算出される指数)の上昇が示すように、足元では先行き不透明感の高まりから軟調に推移しています。今後は追加関税策から景気支援的な経済政策に焦点が移ると想定されますが、そのタイミングをピンポイントで捉えるのは容易ではないでしょう。

 

[図表1]日米の株式市場

 

[図表2]日米の恐怖指数

2:売買タイミングを狙いすぎることで、相場上昇の機会を逃すリスク

■株式市場の先行きの不透明感が高まる局面では、「いったん売却して、落ち着いたらまた買い付けしよう」と考えたくなるようなことがあるかもしれません。ただし、中長期的に経済成長や企業業績の拡大が見込めるのであれば、そのまま「相場に居続ける」ことの重要性を考えてみるべきではないでしょうか。

 

■日本株(東証株価指数:TOPIX)と米国株(S&P500種指数:S&P500)の長期リターン推移を確認します。図表3の通り、青線は過去10年(2015年2月~2025年2月)の全期間のトータル・リターン(配当込み)を示しており、そのなかで月間上昇率の高い上位10ヵ月を赤点で示しています。橙色線は上位10ヵ月の上昇月を捉えられなかった(いったん売却した)と仮定して運用を継続した場合のトータル・リターンの推移です。直近(2025年2月末)までの過去10年間で比較すると、日本株で約2.1倍、米国株で約2.3倍のリターン格差が生じた格好です。

 

■実際のケースでは、行動経済学で示されている「アンカリング効果」が、さらなるリターン格差を生む可能性がありそうです。つまり、投資判断には本来関係のない「いったん売却した価格」に縛られることで、その後の相場上昇の機会を逃し、「相場に戻ることができない」可能性もあるからです。中長期の資産形成を考える上では、あえて売買タイミングを狙いすぎず、上昇の機会を逃すことのないように、「相場に居続ける」ことが重要といえそうです。

 

[図表3]日米の株価指数(トータル・リターン)の長期リターン比較

3:先行きが不透明なときにこそ再評価したい、『積立投資』の有効性

■資産形成を始める際には、「良いタイミングで投資したい」と考えたくなるものですが、現状のように先行きが不透明な局面では、投資の判断を躊躇してしまうこともあるかもしれません。前述の通り、売買タイミングを狙いすぎることで、相場上昇の機会を逃してしまう可能性もあります。ここではリスク分散の手法として、時間(投資タイミング)の分散にあたる『積立投資』の有効性について、考察してみます。

 

■『積立投資』のなかでは、価格が変動する金融商品(株式、債券、投資信託など)を毎月一定の金額を定期的に投資する方法に代表される、いわゆる「ドル・コスト平均法」と呼ばれる投資手法が有名です。一般的なメリットとして、投資タイミングを分散することでリスク低減が見込まれることや、「複利効果」で効果的にリターンを得られる可能性があることが挙げられます。

 

■図表4に示す通り、投資信託を例に、毎月3万円ずつ購入するケースをみてみましょう。当初(1ヵ月目)の投資信託の基準価額は1万口あたり10,000円とします。

 

■基準価額が10,000円のときに3万円を投資すると、3万口を購入できます。基準価額がそれぞれ5,000円、8,000円に下落したタイミングでは、3万円の投資でそれぞれ6万口、3.75万口とより多くの口数を購入することになり、平均取得単価を低減する効果が見込まれます。一方で、上昇したタイミングでは比較的少ない口数を購入することになり、平均取得単価を平準化する効果が見込まれます。

 

[図表4]ドル・コスト平均法を用いたシミュレーション

 

■資産形成で重要な三大原則は、「長期・積立・分散」とされています。まず、「長期」の投資が重要な理由は、運用期間が長いほど、運用によって得られたリターンを再投資することで元本が増える、「複利効果」が見込める点が挙げられます。相場の下落局面が続けば、損失が生じるリスクはあるものの、投資期間を長く確保することでそのリスクを一定程度低減する効果が見込まれます。

 

■図表5は、米国株(S&P500)、日本株(TOPIX)に10年間(120ヵ月)投資した場合の、実績トータル・リターンの推移を示しています。例えば、2025年2月(までの10年間)は、米国株は+13.0%/年、日本株は+8.3%/年となっています。投資期間10年(2010年3月~2025年2月)でみると、米国株では96%、日本株では80%の割合でプラスのリターンを確保しています。投資期間をできるだけ「長期」とすることが、投資リターンの安定につながるといえそうです。

 

■長期にわたって『積立投資』を行い、時間(投資タイミング)の分散を図ることで、より安定した資産形成が可能と考えられています。特に先行きが不透明な局面に有効性があるかどうか、検証してみます。

 

[図表5]投資期間10年の実績トータル・リターン

 

■図表6は、米国のサブプライム住宅ローン問題の悪化が引き金となり、世界的な金融危機をもたらした「リーマン・ショック」が起きる前年の2007年12月末から10年間、一定の条件で一括投資と積立投資を行った場合の評価額の推移を示しています。一括投資に比べると、積立投資は評価額が投資元本を大きく下回らず、相場の上昇局面を捉えて評価額が積み上がっていることがうかがえます。もちろん、相場の上昇傾向が一貫して続くケースなどは、一括投資が有利となり得ますが、先行きが不透明なときこそ、『積立投資』の有効性を再評価する価値はありそうです。

 

[図表6]一括および積立投資のシミュレーション(2007年12月~2017年12月)

まとめに

「トランプ2.0」が世界の金融市場を翻弄するなか、分散投資の重要性が増しています。特に『積立投資』は、時間(投資タイミング)の分散を通じて、長期的な資産形成における安定したリターンが見込めると考えられます。先行きが不透明なときこそ、『積立投資』の有効性をあらためて注目する価値がありそうです。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「トランプ2.0」が高める『積立投資』の魅力 ~市場の変動を味方にする資産形成【解説:三井住友DSアセットマネジメント・シニアマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

久髙 一也

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

シニアマーケットストラテジスト

 

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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