カスハラの「型別対策」を紹介
居座り、暴言、暴力、脅迫…。カスハラにはいくつかのパターンがあります。ここからは、これらのカスハラのタイプ別の対応について見ていきたいと思います。
弁護士や社労士にカスハラ発生時のマニュアルや社員研修を依頼するほか、企業が講じるカスハラ対策に弁護士がどこまで対応するか、費用感や緊急時のフロー等を経営者・担当者・弁護士の三者で密に擦り合わせ、普段から関係値を高めておくことも重要です。
◆時間拘束型
長時間にわたって顧客等が従業員を拘束する、居座りをする、長電話を続ける。
【対応例】
対応できない理由を説明し、膠着状態から一定時間を超える場合、お引き取りを願う、電話を切る。複数回電話がかかってくる場合には、あらかじめ対応できる時間を伝える。現場対応においては、顧客等が帰らない場合は、警察へ通報等の措置で退去を求める。状況に応じ、弁護士への相談や警察への通報等を検討する。
◆リピート型
理不尽な要求について、繰り返し電話で問い合わせをする、または面会を求めてくる。
【対応例】
繰り返し不合理な問い合わせがくれば、次回は対応できないと伝える。それでも繰り返し連絡が来る場合、通話内容を記録し、窓口を一本化し、今後同様の問い合わせを止めるように伝える。状況に応じて、弁護士や警察への相談等を検討する。
◆暴言型
大きな怒鳴り声をあげる。「馬鹿」といった侮辱的発言、人格の否定や名誉を毀損する発言をする。
【対応例】
侮辱的発言や名誉毀損、人格を否定する発言に関しては、後で事実確認ができるよう録音し、程度がひどい場合には退去を求める。
◆暴力型
殴る、蹴る、たたく、物を投げつける、わざとぶつかってくる等の行為を行う。
【対応例】
身体的に何らかの危害が加えられかねないよう一定の距離を保つ等、対応の安全確保を優先する。警備員等と連携を取りながら複数名で対応し、直ちに警察に通報する。
◆脅威・脅迫型
「殴られたいのか」といった脅迫的な発言をする、反社会的勢力とのつながりをほのめかす、異常に接近する等といった、従業員を怖がらせるような行為をとる。または、「対応しなければ株主総会で糾弾する」、「SNSにあげる、口コミで悪く評価する」等でブランドイメージを下げるような脅しをかける。
【対応例】
複数名で対応し、警備員等と連携を取りながら対応等の安全確保を優先する。また、状況に応じ、弁護士への相談や警察への通報等を検討する。ブランドイメージを下げるような脅し発言を受けた場合にも毅然と対応し、退去を求める。
◆権威型
正当な理由なく、権威を振りかざし要求を通そうとする。お断りをしても執拗に特別扱いを要求する。または、文書等での謝罪や土下座を強要する。
【対応例】
不当な発言はせず、対応を上位者と交代する。要求には応じない。
◆店舗外拘束型
クレームの詳細がわからない状態で、職場外である顧客等の自宅等に呼びつける。
【対応例】
基本的には単独での対応は行わず、クレームの詳細を確認した上で、対応を検討する。対応が本格的に長期・事前に返金等に対する一定の金額基準、時間、距離、購入からの期間等の制限等について基準を設けておく。店外で対応する場合は、公共性の高い場所を指定する。納得されず従業員を返さないという事態になった場合には、弁護士への相談や警察への通報等を検討する。
◆SNS/インターネット上での誹謗中傷型
インターネット上に名誉を毀損する、またはプライバシーを侵害する情報を掲載する。
【対応例】
掲示板やSNSでの投稿については、掲載先のホームページ等の運営者(管理人)に削除を求める。投稿者に対して損害賠償等を請求したい場合は、必要に応じて弁護士に相談しつつ、発信者情報の開示を請求する。名誉毀損等について、投稿者の処罰を望む場合には、弁護士や警察への相談を検討する。解決策や削除の求め方がわからない場合には、法務局や違法・有害情報相談センター、「誹謗中傷ホットライン」に相談する。
◆セクシュアルハラスメント型
従業員の身体に触る、待ち伏せする、つきまとう等の性的な行動、食事やデートに執拗に誘う、性的な冗談といった性的な内容の発言を行う。
【対応例】
性的な言動に対しては、録音・録画による証拠を残し、被害者及び加害者に事実確認を行う。執拗なつきまとい、待ち伏せに対しては、施設への出入り禁止を伝え、繰り返す場合には、弁護士への相談や警察への通報を検討する。
企業のカスハラ対策を、社会全体の意識改革のきっかけに
カスハラ対策を積極的に進めている企業はまだ少なく、取り組みを進める企業でも多くの課題を抱え、その解決に苦労しています。
顧客と従業員の関係であっても同じ人間同士であり、人格を侵害する行為は許されるものではありません。カスハラは従業員等の尊厳や心身を傷つけ、放っておくと従業員等のメンタル不調や生産性の低下、退職等企業や働き手に悪影響を与えます。
企業がカスタマーハラスメント対策を講じることで働き手のみならず、顧客の理解につながり、社会全体として意識が変わるきっかけになるのではないでしょうか。
山本 達矢
社会保険労務士法人WILL
代表社労士
特定社会保険労務士
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
注目のセミナー情報
【国内不動産】4月26日(土)開催
【反響多数!第2回】確定申告後こそ見直し時!
リアルなシミュレーションが明かす、わずか5年で1,200万円のキャッシュを残す
「短期」減価償却不動産の節税戦略
【資産運用】5月10日(土)開催
金価格が上昇を続ける今がチャンス!
「地金型コイン」で始める至極のゴールド投資