まだまだ住宅ローン金利が低いいまだからこそ、若い世代を中心に「50年ローン」を選ぶ人が増えています。しかし、50年という長期間の返済には、金利上昇という大きなリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。本記事ではAさんの事例を通し、金利上昇による50年住宅ローンの返済額の変化を、FP1級の川淵ゆかり氏がシミュレーション・解説していきます。
家を買ったよ!“50年ローン”で…世帯年収600万円・29歳息子からの浮かれた報告に63歳父、絶句。「4,000万円のマイホーム」、息子65歳で撃沈する「まさかの返済額」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

返済期間50年の住宅ローンをシミュレーション

まず、Aさんの息子さんの住宅ローンは次のとおりです。

 

借入額:4,000万円(返済期間50年、金利0.5% 元利均等返済、ボーナス返済なし、変動金利型)

毎月の返済額:7万5,361円

 

息子さんの世帯年収は600万円。たしかに毎月の返済額だけをみると、無理のないローン返済のように思えますね。ですが、4,000万円の借り入れとなるとかなり大きな金額です。大きな金額を借りるためには、毎月の返済額を抑える必要があります。そのために「金利はできるだけ低く、返済期間はできるだけ長く」する結果になってしまうのです。ですから、Aさんの息子さんも変動金利型の50年ローンを選択されたのでしょう。

 

支払利息総額の差…35年ローンとの比較

一方でローンが長期化すれば、利息の総額も大きくなります。筆者は毎月の返済額だけでなく、支払う利息の総額も確認してもらうようにしています。ちなみに、金利0.5%が50年続いた場合の35年ローンとの比較は次のとおりです。

 

●50年ローンの場合 毎月の返済額: 7万5,361円 支払利息総額:521万6,406円

●35年ローンの場合 毎月の返済額:10万3,834円 支払利息総額:361万343円

 

160万円を超える差が出てきました。

 

65歳時点でのローン残高の差…35年ローンとの比較

そして、次に大事なのは老後の負担です。65歳時点でローンがどのくらい残っているかをみると、
 

●50年ローンの場合 ローン残高:約1,223万円

●35年ローンの場合 (29歳で返済開始)64歳で完済となるため、ローン残高は0円

 

50年ローンでは65歳の時点で1,000万円を超えるローンが残ってしまうことがわかります。近年は物価上昇で繰上げ返済に苦戦しているご家庭も多いですが、計画的な繰上げ返済で老後の負担を軽くしていく必要があります。

 

5年ごとに0.5%ずつ金利が上昇すると…

それでは、金利が上昇していった場合をシミュレーションしてみましょう。金利の上昇は正確に予測できるものではありませんが、5年ごとに0.5%ずつ上昇すると仮定して計算してみます。なお、30年後以降は3.5%を上限としています。

 

●ローン開始~5年間 金利0.5% 毎月の返済額: 7万5,361円

●5年後~5年間   金利1.0% 毎月の返済額: 8万3,815円

●10年後~5年間  金利1.5% 毎月の返済額: 9万1,876円

●15年後~5年間  金利2.0% 毎月の返済額: 9万9,401円

●20年後~5年間  金利2.5% 毎月の返済額:10万6,259円

●25年後~5年間  金利3.0% 毎月の返済額:11万2,321円

●30年後~20年間 金利3.5% 毎月の返済額:11万7,458円

 

30年後というと、Aさんの息子さんも60代になろうという時です。そのころは現在よりも毎月の返済額は4万円以上も増えてしまうのです。さらに子どもを望んでいる場合、教育費がかかる時期の返済額もチェックしておく必要があります。