死亡者の約1割は「遺言書」を残している!?
最近、「終活」という言葉をよく目にし、耳にします。そして、終活の一環として遺言書の作成に関心を持つ人も非常に多くなっています。
毎年どれくらいの方が自筆証書遺言を書かれているかは知りようがありません。しかし、裁判所の統計によると、最近では毎年1万数千件以上遺言書の検認申立てがなされており、その数は年々増加していることがわかります。すなわち、昭和60年中に家庭裁判所に検認が申立てられた遺言書の数は3301件だったのが、平成17年になると1万2347件となり、平成26年には1万6843件にも達しています(平成26年・第2表家事審判・調停事件の事件別新受件数―全家庭裁判所)。
この数の中には秘密証書遺言の検認申立ても含まれていますが、秘密証書遺言の作成件数は極めて少ないので、ほとんどが自筆証書遺言だと考えてもらっていいと思います。そこで、検認申立件数が年々増加しているということは、自筆証書遺言を書く人も年々増加しているのではと考えられます。
【図表1 遺言書の検認申立件数】
それでは、公正証書遺言の作成件数はどうでしょうか。これについては、日本公証人連合会が毎年統計を取っています。
それによると、昭和47年に公正証書遺言作成件数が約1万7000件だったのが、平成18年には7万2235件と増加し、その後も増加を続け、平成26年には10万4490件に達し、平成27年には11万778件と、11万件を超えるに至っています。
【図表2 公正証書遺言作成件数】
これらのことを総合すると、自筆証書か公正証書かは別にして遺言書を書く人が年々増加する傾向にあることは間違いなく、私の推測からすれば、わが国では年間約120万人の方がお亡くなりになっていますが、そのうち1割程度の方が遺言書を残しているのではないか、また遺言とはまだ縁のない子どもや若い人も事故や病気等で亡くなることも考えると、高齢に達してお亡くなりになる方は完全に1割超の方が遺言書を残しているように考えられます。
自らの「思い」を実効性のあるものにするには・・・
では、人はなぜ遺言書を書こうとするのでしょうか。
その動機は人によっていろいろあると考えられ、古くは家の繁栄・安泰を願って書くのが多かったもの考えられますが、やはり、自分の築き、守った財産の行方は自分の意思で決めたいという思いと、できるだけ相続による争い事を避けたいという思いが強いからだと思われます。その思いを確実に実効性のあるものにするためには、相続と遺言に関する正確な法知識を得て遺言書を作成することが欠かせません。
そこで、過去に相続や遺言書のことで紛争等が生じた事例をもとに、同じ轍を踏まないようにとの思いで本連載ではできるだけ多くの事例を取り上げました。これから遺言書を書こうと考えておられる方や既に書いた人にも見直しを考えてもらう参考になればと願っています。