急逝により企業の経営権が分散してしまったEさん
Eさんはご自身で起業した会社の規模を少しずつ拡大してきた中小企業の経営者です。
Eさんの専門性を活かしたBtoBの卸売業で、根強い需要に支えられ、地域の雇用にも貢献しながら地道に大きく育ててきました。
Eさんは早くに妻を亡くしましたが、2人の子どもが立派に成長しました。長男は有名大学を卒業して金融業界に勤めています。次男は大学を卒業した後にEさんの会社に就職して実務経験を積んできました。
Eさんは次男に会社の経営を継がせ、自身の引退後も業界や地域のために会社を継続させたいと考えていました。
とはいえ、次男はまだ30代でEさんも60代、経営権を交代するには時期尚早です。事業承継はあと10年先でよいと考え、具体的には何も準備をしていませんでした。しかし、この判断が会社の危機を招くことになってしまったのです。
不幸なことに、Eさんは営業先で交通事故に遭い、突如として帰らぬ人になりました。幸い会社経営については次男が大筋を把握していたので当面は問題ありませんでしたが、問題は会社の経営権です。
Eさんは遺言を遺していなかったため、会社の株式をどう分配するかを兄と弟で話し合うことになりました。
大多数の関係者は、弟が株式のすべてを相続し、会社経営に混乱が生じるリスクを排除してほしいと希望していました。弟からも兄の理解を求めましたが、結果として兄は会社の株式について法定相続分の割合を要求しました。
弟が会社の株式をすべて取得し、兄に同等の対価を渡すことができれば交渉の余地はあったのでしょうが、株式評価額は数億円にのぼり、相続税を支払ったうえでそれだけの現金を用意することは不可能でした。
兄は会社の経営にはこれまでノータッチでしたが、金融機関でキャリアを積むと同時に、将来的には経営者としての道をサブキャリアとして残しておきたいと考えていたのです。
この結果、会社の株式は兄弟で等分に分けられ、経営権は分散することになりました。
弟はどうにか会社経営を続けていますが、重要な意思決定の際には会社の実務に通じていない兄の合意を得なければならず、その対応に苦慮しています。
そして経営の意思決定が遅くなってしまった結果、会社のビジネスは徐々に停滞するようになり、多くの優秀な社員が離職していく結果となってしまいました。
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