10年ほど前は、シングル女性からのマンション購入の相談が多かった時期です。しかし、ここ数年で環境は一変。金利上昇や物価高の影響などにより購入をためらう人も多く……。本記事では、Aさんの事例とともに今後の住宅ローンのリスクについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
年収700万円の大手企業勤務・38歳おひとり様女性が4,000万円で「広めの1LDKマンション」を買ったワケ…FPが指摘する「老後破産リスク」 (※写真はイメージです/PIXTA)

変動金利上昇による返済額の変化

■3,000万円借り入れ 返済期間30年(ボーナス返済なし 元利均等返済)

 

・金利0.5%(適用金利)の場合、毎月の返済額:8万9,757円

(元金:8万1,183円 利息:8,574円)(返済第120回目の返済内訳)

 10年後、

・金利1.0%に上昇した場合の毎月の返済額:9万4,258円

(元金:7万7,178円 利息:1万7,080円)(返済第121回目の返済内訳)

 

・金利1.5%に上昇した場合の毎月の返済額:9万,900円

(元金:7万3,281円 利息:2万5,619円)(返済第121回目の返済内訳)

 

しかし、変動金利型ローンには「5年ルール」や「1.25倍ルール」というものがあり、金利が上昇してもすぐに返済額が変わったり大幅に返済額がアップしたりすることはありません。ですが、結果的には増えた分の返済が先送りになりますので、将来のリスクは大きくなります。こういった観点から、変動金利型ローンでも「5年ルール」や「1.25倍ルール」を採用しない金融機関もあります。

 

すでに変動金利型ローンを組んでいる人は、金融機関に「5年ルール」や「1.25倍ルール」について確認しておきましょう。現在のアメリカの住宅ローン金利は6~7%、日本もバブル景気の変動金利(基準金利)は最高8.5%の時期もあり、現在よりも6%近くも高い時期がありました。現在の金利の低さが異常だと認識し、金利上昇に備えておく必要があります。

さらなる追い打ち、転勤命令!

変動金利上昇の話題に頭を悩まされているAさんに追い打ちが。業績は回復したのにもかかわらず、勤務先が早期退職の募集を始めたのです。定年まで勤務するつもりで住宅ローンを組んだAさんでしたから、同期の社員が辞めていくなか、この募集を無視しつづけます。

 

「なんで、業績がいいのに早期退職の募集なんかするのよ!」すでに50歳も目前となったAさんに転職する気持ちはありません。

 

すると数ヵ月後、Aさんに今度は東北地方への転勤命令が出されます。いままで女性には遠方への転勤命令が出たことがありません。

 

「そんなに私が邪魔なの? 転勤すれば定年まで勤められるの?」と、会社に不信感を抱くようになりました。転勤を断る大きな理由もなく、四国出身で東北には行ったこともないAさんは不安しかありません。しかも東北から戻ってこられる保証もなく、大好きな自分のお城から離れることになったAさんはショックで寝込んでしまいます。