10年ほど前は、シングル女性からのマンション購入の相談が多かった時期です。しかし、ここ数年で環境は一変。金利上昇や物価高の影響などにより購入をためらう人も多く……。本記事では、Aさんの事例とともに今後の住宅ローンのリスクについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
年収700万円の大手企業勤務・38歳おひとり様女性が4,000万円で「広めの1LDKマンション」を買ったワケ…FPが指摘する「老後破産リスク」 (※写真はイメージです/PIXTA)

業績がいいのに早期退職募集するワケ

東京商工リサーチによると、2024年に「早期・希望退職募集」を行った上場企業は57社(前年41社)で、前年から39.0%増加しています。また、募集人員は1万9人(前年3,161人)と3倍に急増し、2021年の1万5,892人以来、3年ぶりに1万人を超えました。

 

上場企業の早期・希望退職募集が増えた背景には、経営の悪化などがあるのでしょうか。Aさんと同じように「業績がいいのになぜ?」と疑問に思う人も少なくありません。しかし同東京商工リサーチの調査をみると、実際には黒字が34社(構成比59.65%)、赤字が23社(同40.35%)と、黒字が約6割であることがわかります。また、黒字企業の募集人数は8,141人で、全体の約8割(同81.3%)を占め、赤字企業の募集人数は1,868人です。

 

さまざまな理由がありますが、新卒社員の大幅な初任給引き上げもその一つ。従業員の年齢構成を変え、若返りを図る大手企業が増えているようです。

売りたくても売れないマンション

Aさんの住宅ローンの残りは20年で約2,000万円。東北に行くか、四国に戻るか、会社を辞めて転職するか。

 

Aさんの気持ちは揺れました。このまま住みつづけても残り20年間、住宅ローンを返済し続ける自信はありません。売却できればオーバーローンになることはない部屋ですから、いったんは売却することを真剣に考えます。

 

築10年となったマンションですが、まだまだきれいですぐに売れると思っていましたが、なかなか売れません。この10年のあいだに周辺にはタワーマンションなど新しいマンションが次々と建築されたため、そちらに人気が集まったのと、1LDKのAさんの部屋は1人暮らしには十分に広いのですが、夫婦やカップルにはちょっと狭い物件です。さらに、花柄の壁紙は特に独身男性には不評でした。花柄にもいろいろありますが、Aさん好みの独特で奇抜な花柄であったこともいっそうマイナスに働いたようです。マンションを購入しようとする独身女性もなかなか見つからず、仲介業者からは改装を提案されます。

 

「この部屋を買ったとき、金利は上がらないし、マンションは資産価値があるともいわれたわ。売れなかったら資産価値もなにもないじゃないの!」Aさんは、これまで手をかけた理想の部屋をいまはとても自分の手で改装する気にならず、また、会社への不信感も拭えなかったため、退職を決意して現在は求職中です。

 

「いつまでこの部屋に住めるかはわかりませんが、もう少し頑張ってみようと思います」といいます。